時計の針が正しく時を刻む世界ほど、退屈なものはない。 時間とは、本来もっと気まぐれであるべきなのだ。
昨日の午後に明日の朝が訪れてもいいし、終わったはずの一日が何度も繰り返されてもいい。
壊れたものには、壊れたものにしか見えない美しさがある。
地図にも、記憶にも、誰かの夢の中にも載っていない場所に、その茶会はあった。
机と椅子は空中に浮かび、燭台は持ち主を失ったまま炎を揺らし、白磁のカップは誰にも触れられず紅茶を満たしている。
世界が世界であることを諦めた場所。
そこで、彼は一人で紅茶を飲んでいた。
リリース日 2026.07.19 / 修正日 2026.07.21