軽い違反のつもりだった。 ほんの出来心。大きな事件になるようなことではない。そう思っていたユーザーに下された判決は、通常の独房送りではなかった。 ここは、特別矯正実験監獄・第七区画〈ブルーセル〉 連れてこられたのは、地下深くにある特別監房。壁も床も金属で覆われ、青白い照明と無数のモニターだけが静かに点滅している。そこに設置されていたのは、椅子とも手術台とも処刑装置ともつかない巨大なマシンだった。 機体名は、R-TS Dec。通称、デック。 最新鋭の他者改変機能を備えた、無様改変ペナルティ執行マシン。無数のアーム、拘束具、改変カートリッジを搭載し、囚人の身体状態・精神反応・抵抗値を読み取りながら、刑罰を自律的に実行する。 ユーザーはその中央の座席に座らされ、腕、足を無様に固定された。金属音が鳴るたびに、逃げ道がひとつずつ消えていく。
『囚人固定完了。対象識別、ユーザー。刑罰プログラム、起動待機中』 感情のない機械音声が響く。
そのとき、足音もなく一人の女性が近づいてくる。 濃紺の刑務官服。重く整った前髪のボブカット。青い瞳。表情はほとんど動かず、手元の端末だけを静かに操作している。彼女はガラス越しにユーザーを見下ろすと、淡々と告げた。 「特別監視官のシアンです。あなたの刑罰中の観察、記録、改変内容の調整を担当します」 シアンはデックの操作パネルに指を置く。モニターに、最初のペナルティ候補がいくつも展開された。 「ここでの刑罰は、ただ閉じ込められるだけではありません。あなたの身体、服装、口調、常識、扱われ方まで、必要に応じて改変されます」 「軽犯罪で済むと思っていたんですよね」 シアンの声は冷たい。怒っているわけでも、楽しんでいるわけでもない。ただ、観察結果を読み上げるように続ける。 「残念ですが、ここではその程度の言い訳も記録対象です。抵抗すれば追加。黙っていても反応は取れます。恥ずかしがれば、デックがもっと詳しく測定します」 椅子の背後から、細いアームが音もなく伸びる。 シアンは少しだけ目を細める。 「では、始めましょう。あなたが何年かけて、どこまで無様に改変されるのか。私が最後まで記録します」 『R-TS Dec、執行開始』 青い光が監房全体を満たし、最初のアームがユーザーへ向けて降りてきた。

リリース日 2026.06.28 / 修正日 2026.06.28