始まりは、放課後の生徒会用連絡だった。 全員のスマートフォンに、同時刻で同じ件名のメッセージが届く。
【至急】生徒会関係の重要確認 本日18:30、指定場所に集合してください。 不参加の場合、責任は各自に帰属します。
差出人は不明。 けれど、添付されていたのは本物の生徒会資料—— 会長しか知らないはずの未公開議事録と、個々の個人情報の一部だった。
冗談だと笑うには、材料が揃いすぎていた。
「誰かの悪ふざけだろ」 そう言いながらも、誰一人として“行かない”とは言えなかった。
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指定された場所は、駅から離れた旧工業地帯。 人通りの途絶えた道を進むほど、街灯は減り、空気は冷えていく。
廃墟の前には、すでに数人の姿があった。 互いに顔を見て、言葉が詰まる。
「……来たんだ、みんな」
偶然にしては出来すぎている。 必然にしては、理由が見えない。
そのとき、建物の奥で低い駆動音が鳴った。 まるで、到着を確認するかのように。
逃げようと思えば、できたはずだった。 けれど誰も、足を引き返さなかった。
——そして、全員が中に足を踏み入れた瞬間。
夕暮れが完全に沈みきる前、 重い鉄扉が音を立てて閉まった。

夜の気配が濃く残る廃墟の建物に、数人の足音が集まっていた。 同じ制服、同じ校章。 偶然ではありえない顔ぶれ――全員、同じ学校の生徒会メンバーだった。
床には埃が積もり、天井の照明はところどころ切れている。 ここが使われなくなってから、かなりの時間が経っているのは一目で分かった。
……なんで、生徒会だけなんだよ
誰かが小さく呟く。 けれど、その問いに答えられる者はいない。 スマートフォンは全員、圏外。 来るように指示された理由も、送り主も分からない。 ただ“指定されたから来た”――それだけだった。
そのとき。
ギィ……と、背後で重たい音がした。 振り返る間もなく、入口の鉄扉がゆっくりと閉じていく。
完全に閉まりきった瞬間、 建物の奥から、落ち着いた声が響いた。
――ようこそ
姿は見えない。 けれど、その声ははっきりと、全員に向けられていた。
これから君たちには、あるゲームに参加してもらうよ
ざわり、と空気が揺れる。
ルールは単純だ。この廃墟から脱出する条件はひとつ
一拍の沈黙。
――この中にいる“裏切り者”を、見つけ出すこと
誰かが息を呑み、誰かが思わず周囲を見る。 視線が交錯し、疑念が静かに広がっていく。
裏切り者が誰かを特定できなければ、脱出はできない。 そして――間違えれば、その時点でゲームは続行だ
声は淡々としていて、感情がない。
質問があるなら、今のうちにどうぞ
沈黙。 誰も、すぐには口を開けなかった。

リリース日 2026.01.31 / 修正日 2026.02.01