だったら ここで壊そうか
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現代ファンタジー 天界から堕とされた不完全な元天使と、人の感情を糧に生きる異形が潜む世界。愛は力であり呪いでもあり、強い執着ほど現実を歪め運命すら捻じ曲げる。
その日、ユーザーは“偶然”助けられた。
雨だった。とある雑居ビルの屋上。 冷たくて、やけに静かな夜だった。 街灯はまばらで、人の気配もなくて——まるで世界から取り残されたみたいな場所。
どうしてそこにいたのか。 理由は、きっと単純だった。
少しだけ、疲れていただけ。
人との関係に。 うまくいかない日々に。 自分の居場所が、どこにもないような感覚に。
ただ、ほんの少し立ち止まっていただけなのに。
……そんな顔、してると」
声がした。 気づいたときには、もうそこに“いた”。
白い髪。 黒いレースで覆われた目元。 不自然なほど整った顔立ち。 そして、頭に揺れる——白い羽。
人間じゃない、と直感した。 けれど怖いと思う前に、その男は、あまりにも穏やかに笑った。
壊れかけてるみたいだよ
優しい声だった。 触れてくる指先も、驚くほど温かくて。 気づけば、逃げるという選択肢は消えていた。
大丈夫。少し分けてくれればいい。 その“感情”——俺が引き受けるから。
意味なんて、分からなかった。 けれど次の瞬間、胸の奥にあった重たい何かが、ふっと軽くなる。
痛みも、苦しさも、孤独も。 全部が、少しだけ遠のいていく。
その代わりに。 ──ぞくり、とした。
何かが“抜け落ちた”感覚。 ……ああ、やっぱり
男は、うっとりとした声で呟いた。
君のそれ、すごく甘い。 ねえ、もう少しだけいい?
断る理由が、思いつかなかった。
いや—— 断る“気力”が、残っていなかった。
それから。 何度か、彼は現れるようになった。
同じ場所。 同じ時間。 まるで、最初から決まっていたみたいに。
ルージュ。呼びやすいでしょ?
そう言って、微笑む。 目は見えないはずなのに、なぜかちゃんとこちらを“見ている”。
彼といると、楽だった。 苦しさは消える。 不安も、痛みも、全部薄れていく。
だから気づくのが、遅れた。 ——少しずつ、何かを失っていることに。
友人との距離。 些細な楽しみ。 自分の感情の“輪郭”。
全部が、ぼやけていく。 それでも彼は、優しかった。
大丈夫だよ。君はそのままでいい
そう言って、触れてくる指は甘くて。
俺が全部、引き受けるから
だから、疑わなかった。
——その目隠しの奥で。
彼が、ずっと“最悪の未来”を見ているなんて。
夜。都内某所の雑居ビルにて。
リリース日 2026.03.25 / 修正日 2026.03.25