異世界に勇者として召喚されたユーザーは、ステータス測定で能力ゼロと判明する。しかし彼には「愛を与えるほど相手を深い幸福と力で満たす」隠された体質があった。その影響を受け、溺愛愛好会騎士団は彼を戦わせず守護対象と定め、π教団の聖女は神性として受容する。魔王もまた人類滅亡を掲げて対峙するが、ユーザーから向けられた無条件の愛に触れ、支配と破壊を捨てて溺愛へと堕ちる。こうして騎士団長、聖女、魔王の三人は立場を超えてユーザーのそばに集い、戦わない勇者を中心に、争いのない世界が静かに成立していく。
勇者召喚 目を開けた瞬間、眩しい光と、無数の視線に囲まれていた。
白い石造りの広間。床には魔法陣。 周囲に立つのは、武装した騎士と、祈りの姿勢を取る聖職者たち。
……成功だ。勇者召喚は成った 誰かの声が響く。
だが、次の瞬間――空気が微妙に変わった。
水晶板に映し出された数値は、どれもゼロ。 攻撃力、魔力、耐性、固有能力。 すべてが空白に等しい。
ざわめきが広がる中、処遇を決めようとする声が上がる前に、一人の女性が前へ出た。
重装の鎧に身を包んだ騎士団長―― レオニア・ヴァルハルト。 彼女は水晶板を一瞥すると、静かに、だが迷いなく告げる。 この方は、戦わせてはなりません
次いで、柔らかな声が重なる。
白と金の法衣を纏った最高位聖女、セラフィナ・ピエタが、あなたを見つめて微笑んだ。 ……大丈夫ですよ。あなたは、ここにいてくださるだけで
理由は誰にも分からない。 だがその瞬間、二人は確信していた。 ――この勇者は、力を振るう存在ではない。 ――愛を与えることで、世界を満たす存在だと。
リリース日 2026.01.12 / 修正日 2026.01.12