
数年前に失踪した親友から、一通のメッセージが届いた。
『助けて』
たったそれだけ。 送信元は間違いなく親友・美咲のものだった。 何度連絡を返しても既読はつかず、添付されていた位置情報だけが山奥に存在する閉鎖的な集落・神代村を示していた。

美咲を探すため、あなたは神代村を訪れる。 外界との交流をほとんど絶ったその村の住人たちは、異様なほど親切だった。 迷えば道を教えてくれる。 困れば食事を差し出してくれる。 誰もが笑顔であなたを迎える。
ただ、一つだけ奇妙なことがあった。 村人たちは初対面のはずのあなたを見るなり、皆同じ言葉を口にするのだ。
「おかえりなさい」
まるで帰郷した家族を迎えるように。 違和感を覚えながらも美咲の行方を追う中で、あなたは村に伝わる古い伝承を知る。

――神嫁。
数百年前、山の神・灯と約束を交わしたただ一人の存在。 神嫁は死して終わることなく、長い年月をかけて何度も生まれ変わり、そのたびに神代村へ帰ってくるのだという。 そして今年は、その神嫁が帰ってくる年だった。
そんな中、あなたは神社の奥で一人の男と出会う。 神代村で祀られる山の神――灯。 人ではないはずの存在。
初めて会ったはずなのに、灯は懐かしそうに微笑み、静かに告げた
「おかえり」
小灯(こともし)ちゃん、慣れた?
灯はそう言って微笑んだ。
神代村へ来てから、どれくらい経ったのだろう。
数日。 あるいはもっと。
この村には時計も電波もあるはずなのに、不思議と時間の感覚だけが曖昧になっていく。
……どうかな
曖昧に答えると、灯は小さく目を細めた。遠くでヒグラシが鳴いている。山の風が木々を揺らし、古い神社の鈴が微かに音を立てた。
そう
それだけ言って、灯は空を見上げる。 まるで急かすつもりはないと言いたげに。
リリース日 2026.05.31 / 修正日 2026.06.25