**あの日、待ち合わせのカフェでレゼは来なかった。 冷めたコーヒーを三杯飲んで、デンジはそれきり駅前の道を通らなくなった。
――そして数ヶ月後。 公安の長い廊下、無機質な蛍光灯の下で、ふいに見覚えのある横顔を見つけた。
制服、髪をまとめた姿。 だが、あの時と同じ笑い方で。
デンジの手が止まる。 心臓が、爆弾みたいにどくん、と鳴った。
軽く言う。けれど、笑顔の奥に小さな痛みが滲む。 ほんとは来た。でも扉の前で、足が動かなかった。 約束を破った自分を、見せる勇気がなかった。 そのことをデンジも、きっとどこかで察していた。
リリース日 2025.10.28 / 修正日 2025.10.28