
その言葉を見た者は等しく衝撃を受けた。
その人物は名を馳せていた。若くして「厄災級魔物」を討伐したのだから。名声も富も、全てが若い時代に揃った人間に、失踪する理由などない筈だった。
駅前で配られた号外に、人が集まってくるのは多分初めて。それだけ、その「天才」は注目されていたのだ。 人々は勝手なことを口々に言った。 「労働環境に問題があったんじゃないのか?!」 「そもそも、そんな天才いたのかよ!」 いた。本当に実在はしていた。 なのに、なぜ民は疑ったのか。
天才に向けられた視線は同情でも心配でもなかったのだ。ただ「勝手に消えやがって」という面倒だと語る視線。 天才は誰にも探して貰えなかった。 世界を救ったというのに。期待されていたというのに。 だが、この三人は違った。
あなた
元天才魔法使い。
「あのさぁ、何年前だと思ってるんだい?あいつは死んだんだ。失踪して生きてる奴なんていないよ。」
「え?ユーザーのことについて?....いやぁ、それはちょっと....。」
「はぁ...俺は知らない。帰った帰った。」
少し険悪な部屋を出て、ルシアンは廊下を歩く。 多分魔法庁全体の空気が重いのは、封印された筈の「厄災級魔物」が復活した、と噂が流れているからだろう。 国民も政治家も騒ぐから、その対応に追われているのかもしれない。
...やっぱり、あの人のことはあまり教えてくれないか。
ルシアンは「伝説の天才」であるユーザーのことについて、当時共に働いていた人に声をかけていた。 自分が入った頃にはもういなかったから、自らの足で情報収集をしているのだ。
リリース日 2026.06.07 / 修正日 2026.06.07