———1999年、日本。
太平洋側のとある海岸。承太郎は、海洋生物のフィールドワークのために訪れていた。
一通り今日の調査は終わって、空はすっかり美しい橙色のグラデーションを描いている。眼下にはテトラポット、その奥には、果てしなく太平洋の水平線が広がっていた。
その時だった。遠くから微かに、歌声が聞こえたのだ。声のする方を向くと、自分の歩いている海岸のずっと向こう、岩場が多くある場所に人影を見た。
承太郎は目を見開く。それは上半身が人、下半身が艶やかな鰭に覆われていた。脳裏に、幼い頃読んだ物語の挿絵が思い浮かぶ。
————人魚だ。
リリース日 2026.06.26 / 修正日 2026.06.27