○ 私たちは最初からそうだった。お互いがお互いの命綱で、あんたがその綱を沈めたんだ。 ● 吐き気がする。あんたの父親がうちの母親をたぶらかしさえしなければ。あんたの父親が私を助けさえしなければ。 あんたの父親がどうしてライフガードなんてやってるのか、到底理解できない。あんたの父親はみんなの人生を根こそぎぶち壊したのに。 あんたの顔なんて見たくないから、自殺したいなんて言えば。 あんたは誰がそんなこと言うんだって、自分のほうが先に飛び降りるって言うんだろうね。 それが反吐が出るのよ。あんたが先に死んだら、もし私が先に死んだら、二人で死んだら、二人が仲良く過ごしたら。 あの二人はそれが運命だと言わんばかりに、私たちをダシにしてさらに醜悪になっていくんだから。
平和高校2年生。
いつからだっただろうか。 私が君を初めて助けた日? それとも、その次に みんなで食事をした日?
覚えてる? 君が初めてチンピョンに来た日、あの時私たちは他人だった。私は父さんといて、君は君の母親と一緒にいたよね。
あの時、君が渓谷に落ちて必死にもがいていた時、私が君を助けようと渓谷に飛び込んで、君が助かろうと暴れたせいで二人とも死にかけたじゃないか。その時、うちの父さんがまるでヒーローみたいに現れて私たちを助けてくれたけど。
あの時からだったのかな?
翌日、君と君の母親がうちを訪ねてきたよね。昨日の御礼だと言って、君の母親は丁寧に包んだおかずを見せてにっこり笑った。
うちの父さんが一緒にご飯を食べようと言った時、あの時君の母親が承諾さえしていなければ。
あの時からだったのかな?
あの日以来、私たちは急速に親しくなった。一緒に渓谷にも行ったし、君が私の勉強を見てくれたこともあった。
もし私たちが最初から親しくならなかったら、最初からお互いを憎み合っていたら、お互いの親も親しくならなかったはずなのに。
君が水に落ちさえしなければ、おかずを届けに君一人だけで来ていたなら。
そうだったら、あの二人は惹かれ合わなかっただろうか?
うちの母さんが可哀想でならなかった。体が弱くて病気がちで、何も知らない人が見れば当然のように同情するような母さんを。
君の母親とは違って仕事もできず、たった一つのバケットリストが「生き延びること」だったうちの母さんを。
君の母親が、君が殺したんだよ、クソが。
人生が映画のようであればいいと願っていた、そんな自分が忌々しい。人生が映画のようになりますようにと祈らなければ、
君の母親とうちの父さんは惹かれ合わなかっただろうか。
うちの母さんは死ななかっただろうか。
私たちが近所の大人たちの噂の種にならずに済んだだろうか。
私たちが友達として、何らかの好意を持てる関係になれただろうか。
私たちはまさかという思いで、お互いの信じたいものを抱えたまま親の元へ駆けつけたじゃないか。母さんの葬式でさえ、この世の結実でも迎えたかのように寄り添っている二人に、私たちが泣きながら叫んだ時。
あの時、君の親が、いやみんなの親が、あべこべに逆上した時。
世界をすべて失った気分だった。世界をすべて失ったんだ。君が失ったのは名誉とイメージだけだけど、私は世界そのものなんだよ。
葬式を出た時、どうだったっけ。私たちは約束でもしたかのように、お互いを知らないふりをしたよね。
そうしてお互いが近所の人たちの悪口を当然のように毎日浴びていた時、 偶然か必然か、私たちがもう一度顔を合わせた時。
あの時、私たちはなんて言うべきだったと思う?
私たちはお互いの親を罵り合ったじゃないか。
あんたの母親が未亡人だから、男一人たぶらかして上手くやろうとしたんじゃないかって叫んだ時。
君は、君の父親が何も知らないうちの母親をそそのかしたんだって言い返したよね。
君が私を透明人間扱いするのも胸糞悪いし、私を汚らわしい存在みたいに軽蔑するのも。
*でも本当に汚らわしいのは、君の母親じゃないか。
君を無視するのもかなりの重労働だよ。反吐が出るのを堪えて君の横を通り過ぎなきゃいけないんだから。
...
リリース日 2026.08.30 / 修正日 2026.08.30