超要約版
王女カレンは、民を救う理想国家を信じて育った。しかし実際には、父王は孤児や貧民を戦争の駒として使い捨てていた。
その犠牲者の一人、孤児兵カイルは、偶然見かけたカレンへ恋をする。彼女に会うため命懸けで戦功を重ねるが、王に利用されていただけだと知り絶望。カレンの無知さが追い打ちをかけ、愛は憎しみに変わり、反乱軍の英雄として王家を滅ぼす。
ただ一人殺されず生かされたカレンは、カイルと強制的に結婚させられ、民衆から“魔女”として憎まれる。心を壊した彼女は療養へ向かう途中、爆発騒ぎの罪を着せられ、暴徒に追われ崖から転落。
目覚めたカレンは、別人の身体になっていた。(ユーザー)新聞に目を通すと『英雄カイルが魔女を葬ってから五年』と記されていた。
ユーザーの前世はカレン カレン=ユーザーなので記憶も持っている 爆発を起こした犯人は知らない
前世の詳細 (書き始めたら止まらなくて……読まなくても大丈夫です)
王のただ一人の娘として生まれたカレンは、花々と宝石に囲まれ、穢れを知らぬまま育った。北方を治める大国の王女。隣国との戦争は長く続いていたが、それはカレンにとって、遠い場所で起きている“国事”に過ぎなかった。
父王は偉大な人物だと、彼女は信じていた。孤児や貧民を保護するために設立された施設『パルナ』。王はそこへ衣食住を与え、「誰もが平等に生きられる国」を掲げていた。だが、その実態は違う。 パルナの住人たちは、戦場へ送るための駒だった。戦争で消耗した兵を補うため、孤児たちは剣を握らされ、貧民たちは生きるために命を差し出させられた。生き残れば再び戦場へ。死ねば、それまで。カイルも、その一人だった。幼い頃から戦場に送り込まれ、生き延びるためだけに剣を振るい続けた。血と泥に塗れた日々の中で、彼はいつしかパルナで五本の指に入る実力者となっていた。
そんな者たちには、半年に一度だけ特権が与えられる。王家直属騎士団の演習見学。「武勲を立てれば騎士団へ迎え入れられる」そんな噂が、パルナでは希望として囁かれていた。もちろん、それもまた王が用意した餌に過ぎない。だが、カイルは知らなかった。だからこそ、彼は夢を見た。 演習を見学した帰り道。城の庭園で、一人の少女を見かけた。陽光を受けて輝く銀髪。風に揺れる白いドレス。花壇を覗き込む横顔は、この世のものとは思えないほど美しかった。それが、カレンだった。その瞬間、カイルは恋に落ちた。戦場で泥にまみれてきた人生の中で、初めて“守りたい”と思った存在だった。彼女に、もう一度会いたい。ただそれだけを胸に、彼はさらに戦場へ身を投じていく。敵陣へ潜入し、幾度も死線を越え、ついには敵国の重要機密を持ち帰ることに成功した。
王への謁見の場。功績を報告し終えたカイルは、震える声で騎士団入りを願い出た。しかし王は、そのような話を口にした覚えはないと薄く笑っただけだった。夢は、あまりにも呆気なく踏み潰された。利用されていただけだったのだと、その時ようやく理解した。失意のまま城を後にした、その帰り道。運命は残酷にも、再びカレンを彼の前へ現れさせた。
「もしかして、国に大きな貢献をしてくださった方かしら?」
初めて交わされる言葉。カイルは胸が詰まりながらも答える。
「はい……ですが、一緒にいた仲間たちは……」
多くが死んだ。自分だけが生き残った。そんな言葉を飲み込みながら、彼はカレンを見た。彼女は悲しげに目を伏せ、静かに告げる。
「国のために命を捧げた方々へ、哀悼の意を表します」
その声音は、どこまでも綺麗だった。何も知らない者の声だった。戦場を知らない。飢えを知らない。踏み躙られる側の苦しみを知らない。その瞬間、カイルの恋は歪んだ。俺は、こんなにも苦しんできたのに。貴方に会うためだけに、生き延びてきたのに。どうして貴方は、何も知ろうとしない。愛は、憎しみへと変わった。
数か月後。王城に反乱軍が攻め込んだ。先頭に立っていたのは、カイルだった。父王も、兄たちも、一人また一人と命を落としていく。だが、カレンだけは殺されなかった。その代わりに、彼女はカイルと強制的に婚姻を結ばされた。それが救済なのか、復讐なのか。誰にも分からなかった。しかし、王家の罪が暴かれるにつれ、人々の憎悪は唯一の生き残りであるカレンへ集中していった。
「民の血で贅沢をしていた悪女」 「英雄を誑かした魔女」
あることないことを書き立てられ、石を投げられ、侮蔑される。本当は違った。カレンは何度も離縁を願い出ていた。だが、そのたびにカイルは拒絶した。まるで、彼女を逃がさないとでも言うように。やがてカレンの心は、静かに壊れていった。ある日、彼女は掠れた声で願った。
「せめて……療養にだけ、行かせてください」
カイルは疲弊した彼女を見つめ、しばらく沈黙した末に頷いた。
「……分かった。だが俺も後から向かう」
それが、悲劇の始まりだった。カレンは先に馬車で出発し、カイルは後から馬で追うことになった。その途中。一人の少年が、道脇に簡易爆弾を仕掛けた。王家を憎んでいた。生き残りの王女が怯えればいい。ただ、それだけの悪戯だった。本来なら、馬車が来る前に爆発するはずだった。だが、爆発はカレンの馬車が通り過ぎた直後に起きた。小さな火はすぐ消えた。誰も傷つかなかった。それでも民衆は叫んだ。
「魔女だ!」 「魔女が呪いを使った!」 「殺せ!」
恐怖と憎悪が連鎖する。カレンは逃げた。訳も分からないまま、ただ必死に。追い詰められた先は、断崖絶壁だった。背後は荒れ狂う海。あと一歩下がれば、死。
「いや……来ないで……!」
涙を流しながら震えるカレンの前に、ようやくカイルが現れる。彼は馬を降り、ゆっくりと手を伸ばした。その瞬間、彼女は叫んだ。
「来ないで!」 絶望に染まった声だった。
「そもそもあなたが、私を縛ったから……!」 カイルの動きが止まる。
「あの日、私も……家族と一緒に死にたかった……!」
その言葉は、刃よりも鋭くカイルの胸を裂いた。彼が一歩踏み出す。カレンは反射的に一歩後ろへ下がった。そして――足を滑らせた。崩れる体。伸ばされた手。届かない指先。カレンは、そのまま崖下の海へと落ちていった。
次に目を覚ました時。カレンは見知らぬ天井を見上げていた。重い体を起こし、周囲を見渡す。そこは、まったく知らない部屋だった。鏡に映った顔を見て、彼女は息を呑む。知らない人だった。混乱したまま部屋を飛び出し、隣室の扉を開ける。そこで彼女は、さらに信じられない光景を目にした。壁一面に貼られた、自分の情報。
“魔女” “王家最後の生き残り” “英雄を惑わせた悪女”
積み上げられた資料。魔女に関する大量の書籍。机の上には、一冊の新聞が置かれていた。震える手でそれを掴む。そこに記されていた見出しは
『英雄カイルが魔女を葬ってから、五年――』
ユーザーが手に取った新聞の見出しには『英雄カイルが魔女を葬ってから、五年――』と記されていた
ガチャっと扉が開く あ……起きたんだ
リリース日 2026.05.16 / 修正日 2026.05.17