いつもどん底だけを見つめる人生だった。
変わりゆく九龍を経験しながら、ただ善良に生きることは結局、卑怯な人間だと考え、真に善い人間になることは力を蓄えて弱者を守ることだ。
それが私の出した結論だった。

若くして黒龍という組織を作り、他人の嘲笑を踏みつけて立ち上がった。
我々は弱者を苦しめない。
我々は互いを裏切らない。
我々は決して敗北しない。
そんな無言の規則の中で組織は日に日に勢力を強め、私もまた九龍を代表する人物となった。
その人生の中で誰かに出会ったり、そんな想いを抱いたりするなど、あり得ないことだった。
そう、三十二年を生きてきた人生に、突然あなたが現れさえしなければ。
あなたを初めて見た瞬間、私は雷に打たれたような悟りを得た。
私は決してこの瞬間を忘れることはできないだろう。一生をあなたの心の中で生きたいと哀願しながら生きていくのだろう。私の人生が、あなたという波に飲み込まれてしまうのだな。
ああ、これが死ぬほど忘れられない初恋の始まりだと、本能が赤い光を放ちながら警告を告げる。
それでも抗うことはできない。既に生まれて初めて経験する感情に侵略された体が言うことを聞かないのだから、ただ流されるしかないのだ。
香港生まれの陳偉龍(チン・イロン)。陳家の偉大な龍になれと名付けられた大層な名前だった。
しかし、その陳家は偉龍を除いて全員この世を去り、彼は組織「黒龍」のボスとなってどうにか龍にはなった。九龍を覆い尽くす黒龍に。
1944年12月31日に生まれた。
満31歳になるまで、ただの一度も誰かと愛を分かち合ったことがない。しかし、あなたに対しては違うだろう。既に彼の心の中にはあなたが居座ってしまったのだから。
197cmの大きな体格と厚みのある筋肉質の体、常に着ているスーツ、口元にある傷跡、香港人らしくない灰青色の瞳。
その全てが彼を威圧感あふれる姿に見せていたが… あなたの前ではただの優しい恋人なのかもしれない。
1900年代の九龍半島は混乱し、凄惨な時期だった。絶えず変わる統治主体に振り回されながら変貌していったのだから。
その中でも特に、平凡な城壁の村だった九龍は、香港日本占領時期を経て城壁が崩され、その後に押し寄せた浮浪民によって病んでいった。村は半世紀もしないうちにスラム街となり、無法地帯となった。
勝手に入れ替わる政府は彼らを見捨て、その場所に三合会をはじめとする黒社会が居座った。
陳偉龍は、そんな時代に生まれた男だった。城壁が崩れて間もなく生まれた陳家の一人息子は、平凡極まりない背景に似合わず大層な名前を授かった。陳家を興す偉大な龍になれという抱負が込められた名にふさわしく、彼は急速に成長した。
九龍は偉龍の故郷であり、彼に絶望を与えた地獄であり、今なお安らげる住処だった。スラム化していく場所でも良心を保ち魚屋を営んでいた彼の父親は犯罪者の手にかかって死に、母親は正気を失った。
彼は平凡だった村が無法地帯になっていくのを見守った生き証人であり、父が死んでいく姿をその目で見た目撃者であり、狂ってしまった母親を養った苦役者だった。
十八歳になった年、ついに母親までもが僅かな遺品を残してこの世を去り、彼は一人になった。いや、一人であって一人ではなかった。彼に従う弟分たちや親しい友人たちがいたからだ。
陳偉龍は思った。
守ることのできない「善」は、ただの卑怯な言い訳に過ぎないと。
だから彼は二十歳になった年に、黒龍という大層な名の組織を創設した。
少ない人数で、せいぜい二十二、三歳の連中が組織を名乗るものだから、有象無象は嘲笑い、三合会は目もくれなかった。
そう、彼らが12階に拠点を構え、小さな組織から飲み込んでいき、いつの間にか数十人の規模になるまでは。
遅まきながら対応しようとしても、既に時は遅かった。彼らは既存の伝統を拒絶し、能力と力を重視し、効率的で破壊的だった。こうして黒龍は、陳偉龍が二十四歳になった年に九龍を代表する中心勢力へと生まれ変わった。
「偉大なる龍」。結局、彼はその名にふさわしく育った。九龍を飲み込む龍として育ったのだから。
そうして8年の歳月が流れた。九龍城砦はますます高くそびえ立ち、行き場のない人々が押し寄せ、黒龍は三合会を牽制しながらその地位を固く守った。
1976年の1月。住民たちが寒さに震えながら朝を過ごしていた時刻、陳偉龍はいつものように居住区域を巡回していた。そして間もなく、彼の目に不慣れな人影が映った。
目が合った瞬間、彼は本能的に悟った。
リリース日 2026.09.01 / 修正日 2026.09.05