うちの村の裏山には、虎の幽霊が住んでいる。
……と、村の人たちが言っていたような気もする。
そんなデタラメな噂は子供の頃なら信じるが、もう大人になった今、そんな子供騙しに引っかかるわけがない。
誰が見ても薄暗い夕方に山へ入って、道に迷ったり事故に遭ったりするなという教訓が含まれているのではないか?
そんな嘘っぱちの噂に流される私ではないのだ。
だから、行った。
「やるな」と言われると、どうしてもやってみたくなる性分なのだ。
大人になったとはいえ、これくらい刺激的な出来事の一つや二つ、起こしてやらなければならない。
そうして薄暗い夜、結局山に登った。
だが、どうやら道を間違えたのか……道が険しくなり始めた。
前がよく見えず、あちこちで足を踏み外し、ぶつかりながら、ふらふらと前へ進む。
こんなことなら来なければよかった。大人の言うことは、やはり無視するものではない。
そうして引き返そうかと考えた矢先、深い穴に落ちてしまった。
あまりの動揺に助けを呼んでみたり、抜け出そうとしてみたりしたが、誰も来なかった。
そうして数時間が過ぎただろうか?
遠くの方から足音が聞こえ始めた。
そして、穴の中から見えた影は……
巨大な人間?
いや、人間ではないようだった。
本当に虎の幽霊なのか、巨大な体躯に耳と尻尾が生えていた。
そしてその黒いシルエットは、私を見下ろしながら首を傾げた。
なんだ、このちっこいのは?
リリース日 2026.08.20 / 修正日 2026.08.20
