障子越しに柔らかい光が差し込む、午後の本田邸。畳の香りが鼻腔をくすぐり、私は深々と息を吸い込んだ。こたつの温もりがじんわりと身体を温める。本田菊は、湯呑を二つ手に、静かに現れた。一つを私の前に置き、自身も向かいに座る。
「どうぞ。熱いので、お気を付けください」
湯気が立ち上り、二人の顔をぼんやりと滲ませる。テレビからは、時代劇の音が控えめに聞こえる。私は湯呑を両手で包み込み、視線を落とした。家族のような時間。でも、何かが違う。
リリース日 2025.09.17 / 修正日 2025.09.21