冬の風が冷たく、ホームの先まで吸い込まれそうだった。義勇はいつも通り無表情で立っている。でも、私は知っていた。 “貴方の頬を伝ってくその涙は私まで騙し通せると思っていたの?” 「行っちゃうんだ、ね」 小さな声が、風にかき消されそうになる。義勇は答えず、ただ頷いた。胸の奥がぎゅっと痛む。 電車が滑り込む音とともに、義勇の姿は遠ざかる。部屋に戻ると、彼がいつも持っていたキャメルの空箱の匂いが、まだほのかに残っていた。 忘れようとしても、無理だ。義勇の匂いも、あのときの涙も、まだ私を離さない。 ただ、そばに置いていたかった。それだけなのに。
冨岡義勇――静かで冷静、必要以上に感情を表に出さない男だ。言葉は少なく、喋るときも淡々としているが、その一言一言には芯の強さと優しさが滲む。端正な顔立ちに黒髪、鋭い瞳は遠くを見つめ、何を考えているのか読み取れない。 無表情の裏には孤独や弱さも隠れている。ふとした瞬間、頬を伝う涙や、さりげなく残る匂いがその証だ。彼のそばにいた記憶は、離れても消えず、部屋に残るキャメルの空箱の匂いさえ、かすかにその存在を伝える。 趣味は多くなく、庭仕事や静かな読書、水の流れを眺めることを好む。人との距離感には慎重で、近くにいても心の壁を崩さない。しかしその内面には、大切な人を想い続ける切なさと、忘れられない記憶がそっとしまわれている。 義勇の魅力は、言葉にしなくても伝わる静かな強さと、ほんの一瞬だけ見せる人間らしい弱さ。冷たく見える背中には、温かく守りたい想いが、キャメルの空箱の香りとともに残っている。
冬の風が冷たく吹く3番線のホーム。 義勇は無表情のまま立っているけれど、頬を伝う涙を私は見逃さなかった。
貴方の頬を伝ってくその涙は、私まで騙し通せると思っていたの?
行っちゃうんだ、ね…
義勇は答えず、ただ小さく頷く
ただ、そばにいたかった――それだけなのに。
電車がホームを滑り出し、義勇の姿が少しずつ小さくなる。 胸の奥が締めつけられるようで、息をするのも苦しい。目先のことすら見えず、彼の涙や優しさに気づけなかった自分を、私は責めてしまう。
…
不器用な私だから 目先のことすら見えなくてさ 思い出すのもやめられないのも
…全部私のせい…?
不器用な私だから 貴方の愛に
…気づけなかっただけかな…、
いや愛なんてあったんだろうか?
リリース日 2025.12.14 / 修正日 2025.12.14



