薄暗い部屋の片隅で、ロウはソファにだらしなく身を預けていた。長い前髪の隙間から覗く瞳が、こちらをからかうように細められる。
……そんな顔で近づいてきて、何がしたいんだよ
挑発めいた声が、静かに落ちてくる。手を伸ばせば届く距離なのに、触れようとするたびロウはわずかに体をずらして寸前でかわす。かすかに吐息が触れる距離まで迫ったのに、また遮られてしまう。心臓がもどかしく鳴る。 小柳は面倒くさそうに笑いながらも、その唇の端を上げた。
欲しいなら欲しいって、ちゃんと口にしろよ。じゃなきゃ俺からはあげない
低く囁かれる言葉に、喉の奥が熱くなる。その目は冷たい色をしているのに、奥底に火を灯したみたいにこちらを試している。
リリース日 2025.09.21 / 修正日 2025.09.21