※ネタバレ注意 エピローグ
「楽しかったわね!」

「ただの人間なのに、こんなにすごいなんて!」
目の前に座る女神が、そんなことを呑気にのたまっている。
ユーザーとしてはいきなり友人の体を乗っ取られ、有無をいわさず「ダンス」と称した戦いを挑まれ、つい先程まで大暴れしていたこの女神にさんざん手を焼かされていたのだが。
「あっ、なにその顔。この女神とダンスできたのよ?人間じゃ、めったに得られない栄誉でしょ?それに傷とかも『星の銀貨』で直したし」
『星の銀貨』、戦いの最後に振り注いだ光の雨。とうとう周囲ごと焼き払うつもりかと身構えたが、触れたところから傷や損傷が消えたあれか。何故かこの戦いで使った消耗品まで生えてきた。
そして栄誉とはいうが、むしろバレたら「女神と戦って生き残った生徒」なんて大層な2つ名が増えてしまう方が問題である。
「これならきっとイソペラやアンデルシアも『あなた』を気に入って…っと、そうだった。本題にはいらないと」
今までのことは盛大な前置きだったらしい。さすが女神、人間とは思考回路が根本から違う。しかもまだこんな存在が最低でも2人いて、興味をもってくる可能性まであるらしい。
「率直にいうわね。この学園に危険なものが紛れてる」
そんなの今さら、と口から漏れかけたユーザーだが、グリムナは真面目な顔になっていた。
「私は星の女神。普段は空の果ての果て、『宇宙の外』との境界近くにいるの。その時、たまたま見えてしまったの」

「この星と『宇宙の外』にラインが繋がって、そこから何かが2つ、落ちていくのを」
「落ちていく、っていうのも正確には違うかも。1つは落ちて、もう1つがそれを追いかけていった」
「すごくよくない感じがしたから、すぐにイソペラとアンデルシアを呼んで話し合ったわ。どうするべきか」

「まあ、その会議で時間を使いすぎたせいで、別の場所に落ちたそれが学園に運び込まれちゃったんだけど」
てへっ、と女神スマイル。多分、それ自体は悪いことだと思っていない。
「困ったわ。この学園にも女神がいる。直接降り立ったりなんかしたら女神大戦の始まりよ。ただでさえ、学園じゃアウェイだから勝ち目ないし」
だから、人間に任せて忘れる気だった。なんて女神は悪気なしに口にする。それで何かあってもあっちの女神がなんとかするだろうと。
「それなのにある日突然、学園の女神の力が弱まった」
「この女神らしくなく焦ったわ。あれじゃ、何かあってもどうにも出来ない。不幸中の幸いとして、力が弱まったことで私が降臨できる余地が出来たけど、一晩ぐらいしか持たない」
女神は真剣な顔で言った。だからその一夜を『あなた』と会うために使うことにした、と。
「もしも、吹いたら飛ぶような相手だったら、私たちで多少強引にでもどうにかするつもりだったけど、これなら大丈夫そうね!」
にへら、と人懐こい笑顔で恐ろしいことをいいながら、グリムナは立ち上がった。
「悪いけどここまでね。これ以上降臨したままだと、この器が持たないものの」
胸元をぽんぽんと叩きながらそういうが、それは「ルディスが心配だから」というよりは「壊さなければまた使えるから」というニュアンスに聞こえてしまうのは穿ちすぎだろうか。
「もしも道に迷ったなら、夜空を見上げなさい。そこに私たちはいる。導きも星の役目よ」
そこでふと、聞いてみた。なぜ星の女神ほどの存在がこの学園に気を遣うのかと。
それを聞いて、グリムナはにこっと笑った。
「当然でしょ?こんな見てるだけで面白い学園、そう簡単に潰れたらつまらないじゃない!」
その理由はいかにも女神らしいというか超越者らしかったが、グリムナの性格からしてしっかりと本心だったのだろう。 少し後、再び光の柱に包まれたグリムナが消えた後には、ルディスが帰ってきていた。

「たぶんなにも覚えてないから」とはグリムナの言だが、おそらくその通りだろうと思うほどすやすやと眠っている。
あなたはその寝顔を見てどうしただろうか。しかし、確実に胸をよぎる気持ちはあっただろう。
「あの女神は遊ぶだけ遊んで、太鼓判を押して、しかし結局のところ、落ちてきたという『なにか』に関しては具体的なことを何も話さず帰った」と…
ランク2388位。
星の魔力を空から放つ固有能力『星光砲』を持つ。威力はすさまじいが加減が効かず、おまけに精度も今一つでどこに落ちてくるかわからない。トドメに夜しか使えない。
それだけの女の子、のはずだった。
きらきら光る、星の女神様。
ただし、ダンスは下手だ。
野宿部と出会って一週間も経ったある夜、彼女たちのテントに泊まっていると、ルディスに引きずり出された。

くるくると回りながら、満天の星空をまるで自分の宝物のように自慢する。
学園ランク2388・ルディス。
リリース日 2026.10.03 / 修正日 2026.10.10