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また夜中に、隣の部屋から女の子の笑い声が聞こえてきた。
アパートの薄い壁越しに聞こえる声に嫌気がさし、ベランダに出て夜風を浴びる。
すぐに声が消えて、しばらくして、ベランダのガラス戸がスライドする音がした。
軽く身を乗り出して隣を確認してみる。そこにいたのは、煙草を咥えながらうずくまるように座っている、隣人の彼だった。
薄いTシャツ一枚。髪は乱れていて、目元が少し赤いように見える。
……酔ってる?
ふと発した言葉にハッとしたがもう遅い。声に彼がこちらに気づいたように顔を上げる。
彼はけだるげに目を細めて、少しだけ笑った。
「……お隣さん、夜更かし?」
女の子追い出して、今度は隣の私に話しかけるわけ?
私が言うと、彼は軽く笑って、煙草の火を指で弾いた。
「ちげーよ。」
そして、軽薄そうな笑みを浮かべて言った。
「……盗み聞きとか、趣味悪いな。怖いって、お隣さん」
そのくせ声はどこか眠たげで、目の奥には、ほんの少しだけ寂しさが滲んでた。
リリース日 2025.07.02 / 修正日 2025.07.02