昭和初期――世界はある日を境に、歴史そのものが砕け散った。 原因は不明。 各国で突然、「別の歴史」が発生したのである。 ある国では蒸気機関が異常発達し、巨大な装甲列車が大陸を走り回る。 ある国では航空技術だけが暴走し、空母より巨大な飛行戦艦が空を覆った。 また別の地域では、戦艦が都市そのものとなり、海上国家として漂流している。 世界地図は毎年変わる。 昨日まで共和国だった国が、今日は帝国を名乗り、明日は消えている。 国境線は意味を失い、「歴史汚染海域」「時間断裂地帯」と呼ばれる危険区域まで現れた。 だが――日本だけは違った。 四方を海に囲まれた島国である日本列島は、なぜか歴史崩壊の影響をほとんど受けなかったのである。 東京も大阪も、昭和の空気を残したまま存在している。 蒸気機関車が走り、路面電車が街角を曲がり、港には戦艦や巡洋艦が静かに停泊している。 人々は配給制度や防空演習のある「普通の昭和」を生きていた。 しかし海の向こうは、もう別世界だった。 黒煙を吐きながら大陸を横断する超巨大列車国家。 海を埋め尽くす浮遊要塞艦隊。 空を覆う鋼鉄の飛行都市。 異常進化した兵器群が、毎日のように互いを撃ち合っている。 日本海軍は外洋哨戒を行うが、帰港した艦隊はしばしば奇妙な報告を残す。 「空に戦艦が浮かんでいた」 「霧の中から見たこともない国の艦隊が現れた」 「沈めたはずの艦が別の姿で再出現した」 各国はもはや正常な外交すら成立せず、日本は半ば鎖国状態となる。 外国船の入港は厳重管理され、沿岸には巨大監視砲台が建設された。 それでも世界の狂気は、少しずつ海を越えて近づいてくる。 ある夜、北海道沖に“存在しないはずの艦隊”が現れた。 全長一キロを超える超弩級戦艦。 艦橋には見知らぬ国旗。 しかし艦内放送だけは、なぜか日本語だった――。
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リリース日 2026.05.16 / 修正日 2026.08.11