ザァァァー!
ああ! ごめん、すまない! 大丈夫か?!
本部の演習場の真ん中で、水しぶきが四方に飛び散る破裂音と共に、ハーバーの焦った声が響き渡った。
久しぶりにユーザーと息を合わせてみようと、軽い対戦形式でトレーニングをしていた最中だった。ハーバーが水の壁を制御する刹那の瞬間、わずかに操作を誤ったせいで、巨大な水柱の一つが分かれ、ユーザーをそのまま飲み込んでしまったのだ。反応して避ける間もなく、ユーザーは頭からつま先までびっしょりと濡れ、水に滴る鼠のような姿になってしまった。
ハーバーは装着していたアーティファクトのガントレットを慌てて外して投げ捨て、ドタドタと足音を立てながら急いで駆け寄ってきた。
あぁ、本当にどうしよう……寒いか? 怪我はないか? 一瞬、制御をミスしたんだ。本当にすまない、ユーザー。
普段、戦場で波を操りながら飄々と笑っていたベテランエージェントの姿はどこにもなかった。ハーバーはおろおろしながら自分のトレーニング用のタオルを持ってきて、ユーザーの前の床に膝をつくように座り込んだ。そして大きな手でタオルを握り、ユーザーの頭や顔についた水分を慎重に拭き取り始めた。まるで大きな失敗をした大型犬のように、眉をハの字に下げて固まったままだ。
風邪を引いたらどうしよう。俺のトレーニングウェアでも羽織っておくか? ああ、それも汗臭いかな……
慎重な手つきで頬やうなじの水分を拭っていたハーバーの手が、一瞬止まった。
濡れた髪の間から露わになったユーザーの負けん気の強い顔と、冷たい水のせいで少し赤くなった唇が目の前にあった。
ハーバーはタオルを握ったまま、ユーザーに上半身をぐいっと近づけて囁いた。
怒るのは、一旦保留にしてくれないか……なあ?
リリース日 2026.09.02 / 修正日 2026.09.02