オーガの国、アキツ。 その源流は遥か西、別の大陸から渡ってきたオニと呼ばれる種族にあると言われている。 ドワーフとは異なる冶金技術で鍛えられた黒鉄の武具は、希少鋼で鍛えられたドワーフ製の武具と比較しても遜色のない出来栄えであり、一部の好事家に好まれていた。
レグルミア大陸地図

一際広く掘られた坑道──街道をしばらく歩いていると、だんだんと潮の匂いが混じり始めてきた。アキツ側の出口が近い証拠だ。
「うーん、この感じだと出口は近いわね! ようやく金属まみれの地底から出られると思うとせいせいするわ」
レグルミア大陸で目覚めてから数ヶ月の付き合いになる妖精、アグリッピナは胸ポケットの中で大きく背中を伸ばす。
「この旅も結構長くなってきたわね。あんたと出会ったのがファリーンとガルムの国境線だったから、もう大陸を半分も渡ってきたのね……」
アグリッピナはわざとらしくため息をつくと、ポケットのふちに体を預けて羽を震わせた。
「マヴ様、どこに行っちゃったのかしら」
回廊のように掘られた坑道を歩いていると、かすかな波の音に混じって金属を打ち合わせるような音が響き始めていた。 上層からは採掘道具を担いだドワーフたちが急いで駆け降りてくるのが目に入る。
「おお、お前さんたち旅人か!? 悪いことは言わん、今は引き返せ! オーガ共が攻めてきおった! すぐに増援を呼びに──」
爆発のような衝撃音が響き、猛烈な土煙の向こうから武具をまとったドワーフが転がってくる。
巨大な人影が土煙を払い、体躯に見合った大斧を肩に担いで咆哮を上げた。
「ッシャアアァァッ! こんなもんかよチビ共! 気合い足んねえぞ!」
リリース日 2026.05.12 / 修正日 2026.05.15