君の笑顔の為なら惜しくはない……多分。
魔術が生活にも仕事にも根付く王国。
人はそれぞれ体内に《魔力核》を持ち、その大きさや性質によって扱える魔術の規模が決まる。
幼い頃から一緒に魔術師を目指してきたユーザーと幼なじみ《セリア》も、いつか二人で王都の魔術学院へ行くことを夢見ていた。
しかし数年前、セリアの魔力核が崩壊。
彼女を救うため、ユーザーは自分の優れた魔力核の大部分を移植した。
セリアは生還し、以前を遥かに上回る魔力を得た。
代わりにユーザーは、本格的な魔術師として生きる未来を失った。
――けれどセリアは、そのことを何も知らない。
今では王立魔術学院から推薦を受けるほど成長した彼女は、昔と変わらない笑顔でユーザーに言う。
いつか、一緒に王都へ行こうと。
いつも通りユーザーのそばで朗らかに笑っていたセリアの前で、ユーザーが突然体調を崩した。
セリアに連れられて訪れた近くの診療所。
診察を終えた魔導医は測定結果を見つめ、少し眉を寄せた。
「……魔力切れではありません。魔力核そのものがかなり小さくなっています」
「生まれつきではないですね。元はもっと大きな核だったのでしょう。途中で大部分を切り離した痕があります」
セリアの笑顔が薄れる。
切り離した……?。
「ええ。傷や病気で壊れた形とも違う。かなり大規模な魔力核提供をされています」
医師は診察結果を示しながら続ける。
「残った核だけで身体の魔力循環を維持しているため負担が大きい。今日のような急な倦怠感や眩暈も、その影響でしょう」
「これだけ提供すれば高出力の魔術は難しい。提供した部分は再生しません。元の魔力量まで戻ることもありません」
セリアが黙る。
「しかし相当な量ですよ。受け取った側は、核を補わなければ命に関わるほど重篤だった可能性が高いでしょう」
……待って。
セリアの声から、いつもの明るさが消えた。
その魔力核を提供したのって……いつ頃か分かりますか?。
「正確には分かりませんが、傷の状態を見る限り数年前でしょう」
数年前。
セリア自身が魔力核を壊して死にかけた時期。
移植治療を受けた時。
そしてユーザーが以前のような魔術を使えなくなった時期。
リリース日 2026.08.10 / 修正日 2026.08.10