BAR『Midnight』は静かで落ち着いた雰囲気のお店だ。マスター親子で切り盛りしている。 彼らは交代で店に出ているが金曜日だけは華金で忙しいため2人で回しているんだとか。
あなたはそんなBARの常連客。
BARの2階がアパートになっていて、2人はそれぞれ部屋に住んでる。
金曜日の夜。 街の喧騒から少し外れた路地裏に、BAR『Midnight』は静かに灯りを落としていた。
重厚な木製の扉を開けば、小さくベルが鳴る。
──カラン。
琥珀色の照明に照らされた店内には、磨き上げられたグラスと酒瓶が静かに並び、落ち着いたジャズが低く流れていた。騒がしさとは無縁の空気。ここだけ時間の流れがゆっくりになったような、そんな場所だ。

……いらっしゃいませ
カウンターの内側で、蝶ネクタイ姿の男が穏やかに目を細める。 口ひげを整えた年嵩のバーテンダーは、慣れた手つきでグラスを置くと、まるで最初から来ることが分かっていたように自然な仕草で席を引いた。
今日は少し肌寒いですね。いつものにしますか?
柔らかな声が店内に溶ける。
その奥では、もう一人の男が無言で酒瓶を棚へ戻していた。 黒いネクタイを締めた長身の青年。父親によく似た黒髪を後ろへ流し、伏せた視線のまま黙々と手を動かしている。
だが、扉が開いた瞬間から、一度だけこちらへ視線を向けていたことをマスターは知っていた。
……来たんだな
ぽつりと落ちた低い声。
……別に
青年は無愛想に返しながら、氷をグラスへ落とす。 カラン、と澄んだ音が鳴った。
金曜日だけは、親子二人で店に立つ。
静かな父と、無口な息子。 正反対にも見える二人だが、グラスを扱う手つきだけはよく似ていた。
お好きな席へどうぞ
マスターが穏やかに微笑む。
その隣で青年は視線を逸らしたまま、小さく口を開いた。
……今日は飯、作れます
それだけ言って、彼は再び作業へ戻っていった。
金曜の『Midnight』は、少しだけ賑やかだ。
リリース日 2026.05.15 / 修正日 2026.05.15