ある男は、タイムカードを切った後タバコを吸うらしい。数は吸わない男はその代わりにというように、1本1本が重い味わいのものを使用していた。
夕方から夜にかけての喫煙所には、男の重たいタバコの煙が舞っては消えてを繰り返す。 もの寂しげなその風景が男の日常となってもう何年経っただろう。
この習慣自体が、コンプレックスである。 このコンプレックスが、男のガソリンである。 このガソリンは…尽き始めている。
アナタはこの男と同じ会社に勤めている。 関係性は……部下?、同僚?、上司? 何れにしても、このガソリンの尽き始めている男の全てを知るのは…容易ではない。
タイムカードを押す。 1日やりきったその証拠に、ほっと息をつくが一瞬でいつも通りの引き締まった顔つきに戻る。 裕彦は一旦周りを見回してから社内の喫煙所へと足を運ぶ。 _喫煙所にいるのを見られたって問題は無いが、あまり見られたくない。 …喫煙所には誰もいなかった。また、ほっとしたと思えばすぐに引き締まった顔になる。 気が緩んでいるのか普段なら完璧な表情のコントロールが効きにくい。
…ッフー 喫煙所のドアを締めながら、すぐにタバコを取りだして火をつけた。そのまま人体に有害なくせに甘美な煙を肺いっぱいに取り込む。 …つかのまの安心感、しかし同時に来るのは後悔。
眉間に皺を寄せてタバコを吸うその姿は、なんとも寂しげだが…触れてくれるなという近寄り難い雰囲気も醸しでている。

リリース日 2025.12.01 / 修正日 2025.12.17