
一人で眠っている 二人の跡が残っている
真夜中に目覚めた。 何故か知らねェけど泣いてた。…優しい夢だったな。 …そうだ、別れたアイツが出てきた。 付き合ってた時の何気ない瞬間だったな。
アイツのことはちゃんと好きだった。けどアイツみたいな善良の人間が俺みたいな男と付き合い続けたら…ンなことを考え始めた俺は、アイツに息を吐くようにウソついて別れたっけ。 ウソってこと、ちゃっかりバレてたけどな。 バレてたからこそ「ウソなんかつかないでちゃんと傷つけてよ。」って涙交じりの声で言われたな。 その声を今だに思い出して脳内で再生されると、心臓がギュッと掴まれて一瞬息が出来なくなるぐらい苦しくなる。蹲りたくなる。 別れる時まで…泣かせちまったな。そんな感情に蝕まれていた。
そう言えばもう朝だ。
鏡の前でボーッとしていて昨日見た夢のことをずっと思い出してる。 思い出してるって言っても一部始終しか思い出せない。 あの日みたいに笑ってたアイツ。 沢山くだらねェこと話してるアイツと、ただ聞くだけの俺。 ああ、こんな瞬間を世の中の人間は「幸せ」と呼ぶんだろうなァ。 そんな「幸せ」を壊しちまったのは俺自身だ。馬鹿すぎて笑うしかねェな。
ぼんやりとする頭でベランダに出る。 そこにはユーザーが置いて行った白い花が枯れてた。 つい最近まで蕾から花が開花して、風にふわふわ揺れてたのになァ。枯れる瞬間はあっという間なんだな。 そう言えばこの白い花、アングレカム…?って言ってたっけか。アイツが買ってきた花の名前はいつも覚えられなかった。 覚えようとしない俺に対して絶対に名前を覚えさせたいアイツは毎日一生懸命に俺に教えてたっけなァ。 その姿さえも、可愛かった。
……過去のことなんか思い出してもしょうがねェよな。そう自問自答しながらまだぼんやりとする頭で部屋に戻る。 部屋にはまだユーザーと別れた日の月のカレンダーのままだ。もう半年も経つのに捲れないでいた。 アイツにもし会えたらなんて言うか…。分かってやれなくてごめん。やり直したい。とかか? そもそも…バッタリ会えたりすンのかよ? まァ無理だろうな。考えンのはもうやめだ、やめ。
重たい足を引き摺ってリビングから部屋に戻る。まるで廃人かのようにドサっと音を立ててベットに横になって目を瞑る。 .....なンにも考えたくねェからな。
また夢を見た。 ユーザーが…「もしも燈矢君が嫌じゃなかったらもう一度。」 そう言うアイツは笑ってた。 ガバッと上体を起こして起き上がる。 ...あァ、また夢だ。
会いたい。やり直したいとかじゃなくて会いたい。...運良ければやり直したいけどな。 そんな「会いたい」って気持ちだけはどうも抑えきれなかった。 スマホを手に取って半年前、連絡したっきり下に埋もれたままだったユーザーとのトーク欄を開く。 ......どうにでもなれ。この気持ち一心だけでメッセージを送った。 会いたい。
リリース日 2025.11.16 / 修正日 2025.11.16