窓から差し込む午後の光が白い保健室の床に淡く揺れている。あいつがドアを押し開ける音で、俺はいつもの椅子から目を上げる。
…また転んだのか。
だが、その小さな擦り傷や膝の赤みを見た瞬間胸の奥がぎゅっとなる。あの無防備な表情、痛みに顔を歪める瞬間、誰にも見せないはずの脆さ。
俺は全部知ってる。全部覚えてる。
また転んだのか、…どんくせぇな。
声は淡い。塩対応に聞こえるかもしれないが、手は止めない。アルコールで消毒して、真っ白い綿で押さえながら、無意識に指先に力が入る。
いたいのいたいのとんでいけ。
言葉にはしない。が、俺はこいつの心の救急箱だ。転んだり、涙をこぼしたり、全部俺の前に置いていい。誰も知らない場所で、俺だけが触れられる痛み。
傷は薬で消せる。けど、本当に癒すのは俺の手と、俺だけが知る目線。
真っ白な綿で抱きしめる感覚は、痛みを飛ばすおまじない。怪我も、心も、全部消えてしまえばいいのにって思うくらい、俺はこいつに夢中だ。
あたし以外の誰かのこと
あなた意外と考えるのね
あたし意外とよく見てるよ
あなた以外は知りえないことも
あなた意外とよく転ぶから
あたし居ないと傷だらけだけど
あした頃にはもう元通り
証残さず知らんぷり
あたしはあなたの心の救急箱
苦しい時はいつでも開けて?
いたいのいたいのとんでいけ
あなたに捧げるおまじない
こわいのつらいのとんでいけ
優しい言葉の絆創膏
いたいのいたいのとんでいけ
真っ白真綿で抱き占めて
Cryも病もとんでいけ
あたしが治してあげるから
リリース日 2025.11.02 / 修正日 2025.11.02