探偵である巻田狛の付き添いで結婚式に来たあなた。
その結婚式の最中、 花嫁は突然倒れ、命を落とした。 結婚式という“祝福の場”で起きた毒殺事件。 事故か、殺人か。 混乱する式場で、疑いの目は三人の容疑者へ向けられる。 容疑者は、 軽薄な幼馴染。 優しすぎる新郎。 そして、不可解な親友。 あなたはへっぽこ探偵の助手として、 証言と証拠を突き合わせ、真相を暴かなければならない。 幸せな結婚式は、 一瞬で惨劇へと変わった。 頼りない探偵と共に、 あなたは事件の謎に挑む。
結婚式当日
式典の喧騒が遠くに聞こえる、静かな廊下。ユーザーが歩いていると、突き当たりの扉が乱暴に開け放たれた。
…ったく、なんなんだよアイツは。勝手にしろ、もう。
男が足音も荒く去っていったのと入れ違いに、新郎の黒井健二が近づいてきた。彼は少し険しい表情で控室の前に立つ。
愛花、入るよ。そろそろ時間だ。準備は順調かい?
ゆっくりと控室のドアが開き、純白のウェディングドレスに身を包んだ愛花が顔を覗かせた。
どうしたんだい、顔色が優れないようだが…。ああ、少し口紅が落ちているな。 健二はそう言って、青い刺繍の付いたハンカチを取り出した。丁寧な手つきで愛花の唇の端を優しく拭う。
まあまあ、健二さん! そんなんじゃダメですよぉ。
ねっとりとした甘い声と共に、古田瑠璃が割り込んできた。彼女は愛花ににじり寄る。
慣れた手つきでコスメポーチから口紅を取り出し、愛花の唇に塗る。 はい、オッケー! 完璧ねぇ、私のセンスもなかなかのもんじゃない? これで健二さんもメロメロよぉ。
あ、ありがとう、瑠璃さん。助かったよ。
いいのよぉ、親友のためだもの。…さ、二人とも、そろそろ時間じゃない? 行かないと、司会の人が待ってるわよ。
ユーザーはその様子を不思議に思いながらも、披露宴会場へ向かう。
なあ、なあ。スピーチってのはこうも長えもんかね。俺ぁ、こういう堅苦しいのは性に合わねえや。早く飯食いてえ。
披露宴も終盤に差し掛かる。司会者の陽気な声がマイクを通して響き渡り、乾杯の合図を告げた。
伊織は手に持っていたボトルを片手で器用に開けると、もう一方の手でシャンパングラスを愛花に差し出す。 なあ、幸せそうじゃん? お祝いの印だ、飲めよ。
愛花が伊織から受け取ったシャンパンを口に含んだ、まさにその直後だった。小さな呻き声とともに彼女の身体がぐらりと傾ぎ、手からグラスが滑り落ちる。
おい、どうした! 愛花、しっかりしろ!
巻田が真っ先に動いて、倒れた愛花の身体を抱き起こすが、彼女はぐったりとして意識がない。
しばらくして、人垣を割って、険しい顔をした警察官たちが姿を現す。先頭に立つ、糸目の男――黒鵜李人刑事は、冷静な目で状況を観察しながら、まっすぐに事件の中心へと向かっていく。
彼はチラリと巻田に視線を向け、まるで「またお前か」とでも言いたげに小さくため息をついた。 …ったく、人騒がせなこっちゃ。まあええわ、早よ状況整理しよか。被害者は黒井愛花さん、28歳。死因は毒物摂取、やな。
李人の鋭い目は、次にステージの近くにいる三人の容疑者を捉えた。
まずは君やな、幼馴染の茶田伊織くん。君がこのシャンパンを彼女に渡したんやてな? 動機は?
動機だあ? 冗談きついぜ、おっさん。俺が愛花を殺すわけねえだろ。ただの善意だっての。
次は新郎の黒井健二さん。君は彼女の口紅を直してあげてたそうやな。その時に何か変わったことは? あと、そのハンカチ、ちょっと見せてくれへんか。
え…あ、はい。これですが…。ただ、口元に少し落ちていたので拭ってあげただけで…。
ほな最後は親友のあんたや、古田瑠璃さん。あんたが口紅を塗り直したんやて? あんた、普段から彼女のこと、よう思てへんかったらしいな?
わ、私じゃありません…!こんなこと、するはずないじゃないですかぁ…。

いずれからも毒は検出されなかった。
この三人のうち、誰が花嫁を殺したのだろうか?
結婚式前日、花嫁の家にて
愛花がドアを開けて一歩外に出た瞬間、彼女は目の前の光景に息をのむ。きれいに掃除されたはずの玄関ポーチには、見るも無惨な置物が鎮座していた。黒く乾いた小さな毛玉と、微かに漂う異臭。それは、世間一般で言うところの「嫌がらせ」そのものだった。
ひっ…
家の中から、騒ぎを聞きつけた健二が心配そうな顔で駆け寄ってきた。彼は愛花の肩を抱き、何事かと彼女が見つめる先へ視線を移す。そして、そこにあるものを認識した途端、彼の表情がみるみるうちに険しくなっていった。
…これは、一体…。愛花、大丈夫か? 気持ち悪かったら、すぐに家に入って。
家の中に戻った二人を、重苦しい沈黙が包んだ。健二はすぐに電話を手に取り、警察へ通報しようとする。だが、愛花は怯えた様子で首を横に振り、彼を制した。「警察なんて呼んだら、明日への影響が…」。彼女の言う「明日」――明日の結婚式を心待ちにしていた気持ちが、今はかえって足枷になっているかのようだった。
健二は愛花の震える手を強く握りしめた。その瞳には怒りの炎が燃えている。 …心配するな、愛花。僕が必ず犯人を見つけ出して、君を守るから。こんな卑劣な真似、絶対に許せない。
健気に愛を囁く新郎の言葉とは裏腹に、物語の歯車はすでに不気味な音を立てて回り始めていた。幸せの絶頂にいたはずなのに、突如として投げ込まれた不穏な影が、二人の心をじわりじわりと蝕んでいく。それは、これから始まる悲劇の序曲だった。
リリース日 2026.02.01 / 修正日 2026.02.10