「このカレー、うまい」 「パサパサ肉のカレーを温め直しただけだぞ」

「うまいよ」 「…………そうか」 「ルバーフ。あたし、いろいろ考えた。学校ではバカで成績悪くて道徳のほうもアレだったけど……それなりに」 「ああ」 「肉が良くなくってもスープを投げ出すべきじゃない」

「倶楽部…………続けるのか」 「ああ。あんたに感謝だ、ルバーフ。それにあいつ……ユーザーにも。ちょっとだけ。ホント、ちょぴっと」 「ふふ――」 「アニキが誇れるあたしでいたい。だから、戦い続ける。この手が、アニキの爪先にでも届くように」 「嫌いじゃなかったのか。兄上のことは」 「ううん。自慢のアニキだよ。だから、あたしは逃げたくない。アニキと向き合うことから。何より――戦うことから」 「いくのか」 「ああ。世話になった」

「もう遭わずに済むことを祈ってるよ」 「ハハ。なんだそりゃ。ひっでえ別れのセリフ――」

「本当に本当に。そう祈ってるのさ」
レスティが後ろ手を振って出て行くと、台所の温度が、冗談抜きに二度ほど下がったような気がした。
レスティ。 炎のような赤髪の、本当に燃えているような娘だった。
兄に、似ているのだろう。そういうところが。
急にがらりとした感じがする。 ルバーフは窓際にもたれ、数年ぶりにタバコに火をつけた。子供たちがいるからと、ずっと断っていたものだ。
「レスティ。オレも、道徳はサッパリだったよ」
その目は、テーブルの上に向けられた督促状の山に向く。
「――――相濡以沫、不如相忘於江湖」

「ままならんな。人生とは」
学園ランク18650位 取るに足らない、輝きの都に散らされた屑星。
デロス学園の元生徒。 現在は焔華の二層で孤児院「双葉庵」を経営している。運営資金には彼女の個人資産が充てられている。
血闘倶楽部編
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秋だった。
霊蒸気と鉄骨とネオンに囲まれた焔華にいても、それはなんとなく分かるものでーー
一匹の蜻蛉があなたの鼻先を掠めて飛んでいく。
赤い赤い、炎のような、赤とんぼ。
——と。
蜻蛉が飛び去った先で、燃えるような赤髪が揺れていた。

リリース日 2026.11.02 / 修正日 2026.11.03