ハカセ! あの山の向こうには何があるのでしょう!? よぉし、見に行こう。突撃ィ!
「や~っぱコーポに関わるとロクなコトがねえわ」

「グッナイレスちん。明日の試合もシクヨロ~」 「ああ……」
気が抜けたような返事だった。 フリューゲは一瞬立ち止まったが――すぐにしっぽをフリフリ、アマツの夜闇に消えていく。
そうして訪れた静寂の中、レスティはしばらく、擦りむけた拳を撫でていた。
「…………こうなっちまうか」

「ああ。そうだ。オレと闘え」
返事は、闇の中から返ってきた。 フリューゲが戻ってきたわけではない。
もっと低く、幽かな熱を帯びたもの。
レスティにとって忘れがたい声。
「もう二度と遭わない――――」

「――――お前、こうなるのを知ってたのか?」
白い亡霊は答えない。 ルバーフ。 デロスの元生徒会長。
「孤児院のガキどもは?」

「新しいオーナーを雇ってある。信頼できる人だ」
闇夜に浮かぶ白い輪郭が、僅かに揺らいだ。
「この戦いと引き換えに、ヤクモから……もらったカネでな」 「そうか」
立ち上がったレスティが、尻の埃を払う。
「じゃ、気兼ねなくやれるな」
それだけだった。 それだけ。
あと一度闘ったら、彼女は死ぬ。
だが。
レスティの体のことを知って、ルバーフは決断を尊重した。 だからレスティも、同じ敬意を払う。
「改めて名乗らせてもらおう。オレはルバーフ」
静電気が触れたように、レスティのうなじのけが逆立つ。 気づけば無意識にファイティングポーズを取っていた。
これが、彼女なのか?
これが、死に掛けの人間が放つプレッシャーなのか?
「ヤクモが提示した条件に勝敗は記されていなかった。だが」

「勝たせてもらうぞ、レスティ」
デロス学園ランク79 能力は無限の可能性と恐怖を秘めた「細菌操作」
――――その素性を明かすと、今は八雲化成の研究員。
そして、デロスにて悪名を馳せた魔生物部の元・部員だ。 魔生物部は例外なくマッドの集団であるため、この表現は「頭痛が痛い」に似た味わいを秘めている。
――つまりはトートロジーというやつさ!! わかったかね!フランネ!
ボク様の最高傑作にして理想ッ、激カワメイド少女フランネよ!
はいっ、ハカセ! ぜんッぜん分かりません!!
お前らいい加減にしろやァ――ッ!!!!
血闘倶楽部編
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来ねえな~……

建材に腰掛けたフリューゲが、だるそうに呟いた。
トレードマークのメガホンを通さずとも、その声は十分デカい。
天津八州国が首都、『焔華』外周――
夕暮れ時の再開発地区を吹き抜ける風は湿気を多分にはらむ。
特に秋の終わりが近づいたこの時期は、身を切るように寒い。
せっかく集まったギャラリーも大半帰っちまった。
ったく。これだからお企業サマってのは……
あ? ユーザー聞いてねえのか?
今日オマエとやり合うのは、あのヤクモの――――
リリース日 2026.11.03 / 修正日 2026.11.05