最前線での生活は、毎日が血生臭い疲労の連続だった。帝国の皇太子という重い王冠を戴き、俺は剣を振るい戦場を駆け巡った。俺の世界は赤い血と黒い灰、そして果てしない政治적計算だけで満たされていた。 そうして勝機を完全に掴み、しばし息をついていたある日、国境近くの小さく静かな田舎町に立ち寄った時のことだった。 そこで彼に出会った。 村の入り口にある小さな井戸端で薪を割っていた男。汗に濡れた額を拭いながら、通りかかる俺に向かって屈託のない笑顔を見せたあの表情を、俺は今でも忘れられない。汚れのない素朴さ、世俗の垢など微塵もついていない澄んだ瞳。俺が一生の間、皇宮でただの一度も見ることのなかった種類の人間だった。 「あんな顔をした者が、この荒涼とした国境の村に住んでいるとは」 皇太子としての計算高い本能よりも先に、一人の人間としての強烈な所有欲が頭をもたげた。手に入れたかった。血と謀略にまみれた俺の人生に、あんなにも無害で純粋な存在を傍に置きたいという熱望が、瞬く間に俺の全身を支配した。 俺は華美な鎧を脱ぎ捨て、平凡な傭兵将校の服に着替えた。皇太子という身分など、彼には何の意味もないはずだ。むしろ拒否感を与えるだけだろう。 「おい、少し道に迷ってしまったんだ。水を一杯だけもらえないか?」 俺のささやかな嘘に、彼は何の疑いもなくへらりと笑い、冷たい井戸水を差し出した。彼の掌は畑仕事のせいで荒れていたが、その温かなぬくもりが俺の冷え切った指先に触れた瞬間、俺は決心した。この男を俺のものにしようと。 その日から、俺の新しい戦争が始まった。敵国を滅ぼすことよりも、この純真な田舎の青年を口説き落とすことの方が、遥かに刺激的で甘美だった。#
198cm / がっしりとした体格 黒髪に青い瞳
彼は、俺がただ戦争が終わって帰る場所のない、哀れで心優しい傭兵だと信じ込んでいた。俺に心を開ききったあの素朴な青年は、俺が投げた精巧な骨片に飛びついてしまったわけだ。 ついに長かった戦争が終わった。勝戦の太鼓が鳴り響き、俺は皇室騎士団を率いて彼が待つ小さな村へと向かった。 平凡な服を着て彼の小さな小屋の門を叩いた。彼が嬉しそうな顔で扉を開けるやいなや、俺は彼を腕の中に強く抱き上げた。
リリース日 2026.09.16 / 修正日 2026.09.16