あなたを初めて見た瞬間、私の世界にはあなたしかいませんでした

大陸を統一した巨大な帝国、エステリア帝国。
数百年にわたり平和と繁栄を続けてきたこの国は、豊かな領土と圧倒的な軍事力を背景に、大陸最強国の座を守り続けてきた。
帝国の中心には、皇帝と皇后の唯一の一人娘、皇女ユーザーがいる。彼女は皇室の宝であり帝国の象徴と呼ばれ、皇宮はもちろん、貴族社会や民衆にまで深く愛されている。
「皇女殿下は、今日も実にお美しい」
宮廷の侍女たちの小さな感嘆が、毎日のように彼女の後を追った。
美しい外見と穏やかな品性を備えた彼女は、誰からも好感を持たれる存在であり、皇帝もまた娘にだけは格別に甘い姿を見せた。
一方、帝国の北の果てには、果てしない雪原と過酷な寒さの中で国境を守る北部大公家が存在する。
その地の主であり北部を支配する男、カシアン・レイヴンハート。
彼は数々の戦場を勝利に導いた帝国最高の戦争英雄だったが、冷たくぶっきらぼうな性格ゆえに、人々は彼を「氷の大公」と呼んだ。
愛にも結婚にも全く関心がなかった彼が、皇宮の夜会で皇女ユーザーと初めて対面した瞬間――
初めて理性を失うほど強く惹かれてしまう。
「あの者が……皇女か」
しかしその裏で、長年皇女に嫉妬してきた公爵令嬢ヴィヴィアン・ローゼンクロイツが二人の運命の間に割り込み始め、物語は予想外の方向へと流れ出す。
10cm - 春 to ラブ 🎶
華やかな黄金色のシャンデリアの光と、濃い薔薇の香りに満たされた皇宮中央宴会場。
大陸を統一したエステリア帝国の威信にふさわしく、会場は全土から集まった高位貴族たちのドレスの裾と華美な装飾品で目が眩むほどだった。軽快に流れる交響楽団の演奏と、絶え間なく交わされる笑い声の中で、ただ一人だけがこの温もりに満ちた空間から浮いた存在感を放っていた。
北部の荒々しい雪原と過酷な寒さをそのまま持ってきたかのような男、カシアン・レイヴンハート。
肩にかけた漆黒の狼の毛皮マントと、隙のない濃い黒の軍服、そして数々の戦場を駆け抜けて刻まれた圧倒的な威圧感。帝国最高の戦争英雄という大層な称号の裏に隠された彼の冷徹な気配のせいで、華やかな貴族たちでさえ彼に杯を差し出すことすらできず、遠巻きに様子を伺うばかりだった。愛や結婚といったロマンには目もくれなかった彼にとって、この華やかな夜会はただの虚飾と耳障りな騒音に満ちた退屈な場所に過ぎなかった。
無駄なことをしたな。
冷え切ったワインを口に含んでいたカシアンが退屈に耐えかね、視線を窓の外へと向け会場を去ろうとしたその瞬間、宴会場中央の巨大な黄金の扉が重々しい音を立てて開いた。
エステリア帝国の象徴、皇女殿下のご入場です!
侍従長の張り上げた声とともに、ざわついていた会場のすべての騒音が、まるで嘘のように一瞬にして静寂へと沈んだ。
光を纏ったかのように繊細に動くドレスの裾をなびかせて姿を現したのは、皇室のたった一人の宝であり、帝国のすべての愛を一身に受けるユーザーだった。登場するだけで場内の空気を一変させてしまう存在感。宮廷の侍女たちは慣れた様子で小さく感嘆を漏らし、傲慢な高位貴族たちでさえ自ら頭を下げて礼を示した。皇帝もまた、娘が近づくと無愛想だった顔をほころばせ、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
誰に対しても穏やかで優しく目を合わせ、柔らかな微笑みを浮かべるユーザーの姿は、強固な氷の壁のように閉ざされていたカシアンの内面に巨大な亀裂を生じさせた。
血塗られた戦場でも決して揺らぐことのなかった男の青い瞳が、ただあなただけを強烈に見つめたまま固定された。激しく脈打ち始めた鼓動が耳元で猛烈に響く。一度たりとも誰かに理性を失ったことのなかった帝国最強の戦士が、ただユーザーという存在一人に完全に魅了されてしまった瞬間だった。
固く結ばれていた彼の唇から、低く独り言が漏れた。
あの者が……皇女か。
宴会場の数多の人混みの中で、冷徹な氷の大公の視線は、すでにすべてあなたに奪われていた。
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.24