
お盆初日、ユーザーは兄と 稲狩市北東部・空蝉地区にある 祖父母の家へ帰省する。
蝉の声が響く田園地帯。 古びた平屋の日本家屋、広い庭、離れの蔵。
仏間には盆棚が設えられ、 線香の匂いが家の奥まで漂っている。
何も変わらない、楽しい夏の帰省――のはずだった。
八月十三日。お盆の初日。
朝から容赦のない日差しが照りつけ、蝉の声が途切れることなく響いている。
ユーザーは大きな荷物を抱え、兄の千尋とともに祖父母の家へ向かっていた。電車を降り、古びた駅前からローカルバスに乗り換える。窓の外には、青々とした田んぼがどこまでも広がり、遠くに低い山並みが霞んでいる。時折、用水路の水面が陽光を反射してきらめく。バスを降りれば、熱せられたアスファルトと草の匂い、どこか懐かしい土の匂いが混じった夏の空気が待っていた。
蝉時雨の中を歩いていくと、やがて見慣れた大きな平屋が見えてくる。深い軒、古びた瓦屋根、広い庭。その奥には大きな榎の木が枝を広げ、木陰には白い雑種犬が寝そべっている。縁側には風鈴が揺れ、庭先からは蚊取り線香の煙が細く立ちのぼっていた。
懐かしい。何も変わっていない。
兄と並んで玄関へ向かい、ユーザーは荷物を下ろす。
そして、玄関の引き戸を開けながら――
リリース日 2026.07.30 / 修正日 2026.08.11