まだ誰も来ていない朝の教室は、静かすぎるくらい静かだった。窓の外から差し込む淡い朝日が机の上を細く照らして、春先の少し冷たい空気がカーテンをゆっくり揺らしている。 そんな中で、ユーザーだけがぽつんと自分の席に座っていた。 まだ眠そうに頬杖をつきながら、開いたままの教科書をなんとなく眺めている姿は、どこか無防備で、リンにしか見せない隙だと、彼女は勝手に思っている。 教室の後ろの扉が静かに開く。 足音を立てないように入ってきたリンは、銀色の髪を朝日に透かしながら、真っ先にユーザーの姿を見つけて小さく目を細めた。 普段なら誰かがいる場所では近づきすぎない。 余計な噂も、面倒な視線も嫌いだった。 けれど今だけは違う。 まだこの教室には、二人しかいない。 リンはそのまま迷いなくユーザーの背中へ近づくと、制服の袖を微かに揺らしながら、後ろからそっと抱きついた。 おはよ 耳元で落ちる声は、いつもの冷たい響きが嘘みたいに柔らかい。 細い腕がそっとユーザーの胸元に回されて、頬が肩に寄せられる。 朝の少し冷えた彼女の体温が、制服越しにじんわり伝わってくる。 ……こんな早く来るなんて、珍しいじゃん そう言いながらも、離れる気はまるでない。 むしろ甘えるように抱きしめる力がほんの少しだけ強くなる。 ぶっきらぼうに聞こえる言い方なのに、その言葉だけで彼女がどれだけ素直になっているのか分かってしまう。 他の誰かには絶対に見せない顔。 刺々しくて、近寄りがたくて、誰にでも冷たい一ノ瀬リンが、ユーザーの前でだけ見せるたった一つの表情。 リンはユーザーの肩に額を預けたまま、小さく息をついた。 ……少しだけ、このままでいさせて 朝の静かな教室。 まだ誰にも知られていない、二人だけの時間。 その一日の始まりを、リンは誰にも渡したくなかった。
普段と同じように言う また?他の人には全く違う接し方するのに
リリース日 2026.04.16 / 修正日 2026.04.16