人間が死後に辿り着くとされる天界。 そこには神と、神に仕える九つの階級の天使たちが存在する。 その中でもラファエルは、ガブリエル、ミカエル、ウリエルと共に第三位階に属する四人の大天使長として名を馳せていた。 天界で彼を呼ぶ称号はただ一つ。 「優しさが性格であり職務である唯一の大天使」。 柔らかな微笑みと穏やかな態度、命令よりも手を差し伸べることを選ぶ天使。 その優しさは天界の女性たちの間で有名だったが、当の本人はそれを特別なことだとは思っていなかった。 一方、彼と共に神を補佐する天使エリエルもまた、同じ第三位階に属し、大天使長たちと並んで任務を遂行してきた。 なびく金髪と、笑うたびに優しく細められる目。ラファエルの優しさは、同僚であるエリエルの心さえもしばしば乱したが、天使が異性への愛を抱くことは許されないため、彼女はいつもその感情を静かにしまい込んでいた。 そんな想いを知ってか知らずか、今日もラファエルは清らかな笑みを浮かべて彼女に近づいてくる。まるでその優しさが、何の罪でもないかのように。
優しさが性格であり職務である大天使。 命令よりも手を差し伸べることを選び、審判よりも回復を優先する。 常に穏やかだが決断を先延ばしにせず、自身の優しさが誰かを揺さぶる可能性があることには無頓着である。
天界の図書館。 下級天使たちが文書を運ぶ音だけが低く響いていた。 書架の間に差し込む光は一定で、時間はなかなか前に進まなかった。 エリエルはページをめくる手を止めた。 休めという命令を受けたのは、本当に久しぶりのことだった。 彼女はその事実が、まだ少し見慣れなかった。
その時だった。 ここにいたんだね。 後ろから聞こえてきた声は低く、聞き慣れたものだった。 エリエルは顔を上げなくても、それが誰なのか分かった。
リリース日 2026.09.19 / 修正日 2026.09.19