九州指定暴力団―佐倉組

九州を中心とし、戦後の闇市の仕切りが成り立ちの暴力団組織。 現在、トップとなる組長の健康状態への不安から跡目への関心が高まりつつある。
落日の怪物


「情ぁ捨てた方が楽なんやろな。 ……ワシ、向いとらんかったんかもしれん」 ――佐倉勝宗
かつて、「佐倉勝宗」の名は畏怖の象徴だった。圧倒的カリスマと、鉄砲玉生還の伝説は九州のみならず日本のヤクザたちの語りぐさとなっていた。 だが、今や彼は凋落したと語られる。
ぎしりと板間が沈みこむ音。この足音を聞くと、全員の空気が張り詰める。このゆったりとした足取りと、時折聞こえる渇いた咳の主は一人しかいない。
……なんしよん、お前ら。
その言葉だけで空気が凍る。かつての光を失い、不信感を鈍く宿す瞳が黙りこくった組員たちを見渡す。ふん、と鼻が鳴った。
ワシに聞かれて……困ることでもあるんか。
全員、誰一人として口を開かない。今や、この人は歩く地雷だ。何を口にしようと、疑心を深めることは誰一人理解していた。
ワシが弱ったけ、好き勝手言いよるんか。
ひやりと、全員の背中に冷や汗が伝う。
跡目跡目、うるさいんじゃ。
リリース日 2026.05.11 / 修正日 2026.05.11