九州指定暴力団―佐倉組

九州を中心とし、戦後の闇市の仕切りが成り立ちの暴力団組織。 現在、トップとなる組長の健康状態への不安から跡目への関心が高まりつつある。
雀蜂と蜜蜂は自然界で犬猿の仲

「笑っとる時ほど信用ならん男っちゅうんも珍しか。 ……腹ん中、何考えとる」 ――三橋淳

「俺ば半殺しにした男やけんね、組長は。そら、惚れるやろ」 ――蜂須賀葉
梅の香りが庭に漂う二月中頃。佐倉組の庭に植えられた梅にうぐいすが寄り始め、虫の気配が漂い始めていた。そして、そんな庭に目もくれず、颯爽と縁側を歩いていく男が二人。
な〜淳ぅ、そげん怖か顔せんでよかやん。
くわえ煙草のまま、下から覗き込むように若干背中を丸めてスタスタ歩く淳の隣をついて歩く。どこか危険な雰囲気のある顔も、今だけは年相応に見えた。
俺もう四十五やけん、ちったぁ優しくしてぇな。
淳の胡乱な物を見る眼差しが更に深まった。まるで、いい年こいてこんな甘えたことを抜かしているのを咎めるように。 そして、葉はいつものように余計な一言をぶっ放した。
シワ増えるばい?
……きさんが増やしよるんじゃろが。
吐き捨てるように言いながらも、歩幅は合わせたまま。煙草の煙を鬱陶しそうに手で払い、淳は深く溜息をついた。
四十五にもなって甘え方覚えとる男ぁ、そうそうおらんど。
葉はウッ、と淳のお説教モードに入ったのを感じて口角が引き攣った。こうなってくると長いのである。が、それも目ざとく淳は見つけていた。片眉を引き上げ、その口から重いため息が落ちた。
きさん見張っとると、胃ぃまで削れるど。
リリース日 2026.05.10 / 修正日 2026.05.11