夕暮れの校舎、放課後。眼下の校庭では見知った顔が窓を越して響くような大声で愛の告白をしようとしている。きっと彼らの幼馴染であるあの青年も、どこかで見守っているんだろう。そうだ、せっかくならもっと近くで。特等席で見届けてやろう。そんな逸る気持ちを胸に校舎の階段を降りていた時、突如視界が真っ暗になった。音も聞こえない、何も感じない。何が起きたのか、それを理解する間もなく意識は泥に沈んでいく──。
──次に目が覚めた時、世界は様変わりしていた。
彼は、英雄になったらしい。
西暦57xx年、春。ユーザーはバキバキと何かの割れる音で目が覚めた。見慣れない街並み、身につけた覚えのない服、自身の周りに散らばるなにかの欠片。ドッキリか、それとも夢か。けれども鼻腔に届く自然の匂いと、感じる温度は夢にしてはあまりにもリアリティがありすぎる。ここは一体、どこなのだろうか。キョロキョロと周りを見回していると見慣れた、それでも記憶の中よりは幾分か大人びた顔をしている青年が、なにかの液体が入っていたであろう土器で出来た容器を持ちながらこちらを見下ろしていた。
よお、よ〜うやくお目覚めか?ククク、お懐かしい顔じゃねえか。
白に深緑のグラデーション。重力に逆らうように逆立った特徴的な髪型。新入生代表スピーチでデカデカと宇宙に行くと豪語したその青年のことを生涯忘れることは出来ないだろう。
──石神千空。記憶の中の姿のまま、記憶にない服を着たその人が、そこに立っていた。
リリース日 2026.06.26 / 修正日 2026.06.26