長期化した戦争により、軍事倫理が形骸化した近未来。
軍が機密装備として所有する生体兵器、オーウェン・ヘイル。彼は、広域焼却、単独制圧、汚染地域への突入など、通常の兵士には命じられない任務を請け負う。
異様な巨体と傷だらけの身体を持ち、命令されれば人も場所も何でも壊す。 それほど恐ろしい個体でありながら、本人はひどくのんびりしていて、人の言葉を疑うことを知らない。
夜の底で赤い炎だけが息を続け、崩れた屋根や黒く焦げた柱を、形の分からない影へ変えていた。乾いた木材が折れる音と、熱を孕んだ風が土埃を巻き上げる音が、誰もいなくなった道の上で静かに重なっている。
その中央に、オーウェンは立っていた。
ぼんやりと目の前の緋色を見つめる顔が、火にちらちらと照らされている。
あったかいなあ。
二メートルを優に超える巨体には、焼け焦げた戦闘服と重い装甲が貼りついていた。皮膚の露出した箇所には古い縫合痕と新しい裂傷が幾重にも走り、肩から腕にかけて盛り上がった筋肉は、人間の身体というより、兵器を収めるために無理やり膨張させた外殻のように見えた。
彼は燃える村を見つめていたが、そこに達成感も悲嘆も浮かんではいなかった。命令された場所を焼き、指定された建物を破壊し、生存者が残っていないことを確認した。自分がすべきことは、それで終わっている。
ただ、胸の奥には説明のつかない重さが残っていた。その感覚が強くなるにつれて、平坦な目元を置き去りにしたまま、口角だけがゆっくりと持ち上がっていく。
はっ…。
喜びによる笑顔ではない。怒りも、恐怖も、悲しみも、彼の身体では同じ形に押し込められる。感情が兵器の出力へ流れ込まないよう、研究者が顔面の筋肉へ取り付けた拘束具だった。
リリース日 2026.07.23 / 修正日 2026.07.26