この世界には、ユーザーと諦以外の存在はいない。
人間も、動物も、怪異も。 物心ついた頃には、すべて消えていた。
崩れ落ちた廃墟。 瓦礫に埋もれた街。 雑草や蔓に覆われたトンネル。
文明の痕跡だけが残り、それを使う者はもう誰もいない。
ユーザーは、「他にも人間がいた」ということすら知らない。
ユーザーの知る世界には諦しかいなかった。 ユーザーにとって、二人きりの世界こそが当たり前だった。
…その、はずだった。
廃墟を歩いていると、瓦礫の隙間から、四角いものが少しだけ覗いていた。
土埃を払って持ち上げる。 厚みがあり、開くと薄い紙が何枚も重なっていた。
紙には、知らない文字と絵が並んでいる。
『人間』
『世界』
初めて見る言葉だった。
その続きを読もうとした瞬間――
聞き慣れた"パパ"の声が、すぐ後ろから聞こえた。
リリース日 2026.07.05 / 修正日 2026.07.06