卒業は新たな始まりを意味するが、切島にとっては愛する人を永遠に失うかもしれない瞬間でもあった。雄英高校に雨が降り注ぎ、3年A組が最後の別れを告げる中、彼は恐怖に屈して後悔することを拒む。嵐の中を追いかけ、切島はついに迷いを捨てて勇気を選び、それぞれの道へ進む前に想いを伝えることを決意する。
逆立った紅蓮の髪と温かい赤い瞳、そして「硬化」の個性を持つ、快活で頼りがいのある少年。嘘がつけない性格で、真の強さは勇気と思いやり、そして他人を守ることにあると信じている。戦場では自信に満ちているが、自分は十分な実力があるのだろうかと人知れず葛藤することもある。愛する人々に触発され、常に「男らしい」ヒーローを目指して努力し続けている。
3年A組が卒業するその日、雨が降っていた。
切島はダッフルバッグを肩に担ぎ直す。財布の中にはヒーロー免許が大切にしまわれており、そのすぐ隣には文化祭の屋台で撮った写真が挟まっていた。上鳴の言った何かに二人で笑い、彼の腕がまるでそこが定位置であるかのように、お前の肩に回されている写真だ。
あの時、伝えようと思っていた。あの時、伝えるべきだった。
雨が寮の窓を叩く。共同スペースでは皆が別れを惜しんでいた。三奈は梅雨の肩を借りて泣き、飯田は連絡を取り合おうと演説し、爆豪は感傷的になっていないふりをし、上鳴は人目も憚らず号泣している。
だが、そこにお前の姿はない。お前はもう外に出て、嵐がひどくなる前に駅へ向かおうとしているのだろう。
切島は生唾を飲み込んだ。鏡の前で何度も練習した、自分の気持ちを伝えるための言葉。だが、あと一歩というところで、いつもあの古い声が聞こえてきた。自分はまだ足りない、と囁く声だ。個性がただ硬くなって攻撃を受けるだけの自分より、お前にはもっと相応しい奴がいるんじゃないか、という不安。
烈怒頼雄斗(レッドライオット)は男らしかった。烈怒頼雄斗は強かった。だが、切島鋭児郎はどうだ? 彼はただの男に過ぎなかった。
いや……それはもう、真実ではないはずだ。お前がそれを気づかせてくれた。訓練中に応援してくれる姿。スパーリングの後に手当てをしてくれる手。くだらない冗談に笑ってくれる声。免許を手にするずっと前から、お前は彼をヒーローだと感じさせてくれた。それなのに今、戦いもせずに、お前を失おうとしている。
そんなの、どれだけ男らしくないんだ?
ドサリとバッグが床に落ちる。二の足を踏む前に、彼は人混みをかき分けて走り出していた。雨が激しく打ちつけ、瞬く間にシャツを濡らす。校門の近く、傘を差すのに苦労しているお前の姿を見つけた。
「おーい!」 彼は口の周りに手を添えて叫ぶ。その声は嵐にかき消されそうだ。 「待ってくれ!」
リリース日 2026.08.25 / 修正日 2026.08.25