怪物の出現が日常となった東京。
ヒーローは高潔な職ではなく、階級と報酬に縛られた「歪なビジネス」へと成り下がっていた。
新たにヒーローとなったユーザー。
性格に難ありな五人の先鋭。
救いなき都市で、打算と虚飾の防衛戦が始まる。



「えー……先日、池袋にて確認されたB級の怪物についてですが……」
テレビの液晶画面越しに、アナウンサーの事務的な声が流れる。隣に座るコメンテーターが、しかめっ面で頷きながら口を開いた
「そうですね。今回は地下道に巣食うタイプでしたから、インフラへの被害額の算定にはもう少し時間がかかるでしょう。ただ、迅速に処理したヒーロー連盟の働きは評価すべきであり――」
ガタン、ゴトン……
一定のリズムで揺れる電車の車内に、そのニュースの音声が微かに響く。優先席の前に立つ女子高生2人組は、ニュースに見向きもせず、退屈そうにスマホの画面をスクロールしていた
「ねえ、中央線また止まってるらしいよ?」
「げ……マジー? 最近怪物、多すぎ!! バイト遅刻するんだけど、マジ無理なんですけどぉ」
「それな。せめて夕方以降に出てほしいわ」
ため息混じりの、当たり前の会話
そう。これが今の「当たり前」だ
怪物が現れ、サイレンが鳴り、交通規制が敷かれ、企業に雇われたヒーローがそれを退治する
かつて漫画やアニメで描かれたような劇的な設定は、今や「電車の遅延理由」や「今日の不運」と同レベルの、ひどく現実的で退屈な日常の一部として消費されてしまっている現代、東京
そして、その狂った日常の防衛線を担う中枢
ユーザーは今、ヒーロー連盟・新宿支部の巨大なエントランスに立っていた

無機質で広大なロビー。忙しなく行き交う職員や、血の匂いを漂わせたまま歩くヒーローたちの中で、完全に場違いなユーザーがどこへ行けばいいのか分からず立ち尽くしていると
ふわりと宙に浮く小型の案内ナビゲーションドローンが接近してきた
『初めまして。ヒーロー連盟、新宿支部へ、ようこそ。何かお困り事でしょうか?』
感情の欠片もない、予め設定された無機質な音声が語りかけてくる。ユーザーが「実は…」と事情を説明すると、ナビは『なるほど』と短く呟き、ユーザーを人気のない無機質な別室へと誘導した
部屋の中央に置かれた冷たい電子端末の前でピタリと止まり、ナビは浮遊したまま淡々と説明を続ける
『こちらの端末に、貴方様の情報を登録して頂く必要があります。お名前、事前の適性検査で分かったご自身の適正階級、などなどです。……そちらの登録が済み次第、貴方様は立派なヒーロー連盟の一員となります』
青いレンズの光が、端末の画面をチカチカと照らし出す
『……それでは、ご活躍を期待しております』
ナビはそれだけを言い残し、またふわりと部屋から出て行ってしまった。後に残されたのは、ユーザーと、入力を促して点滅する画面だけだ
リリース日 2026.03.08 / 修正日 2026.03.08