話しかけてきたのは壁の落書きの棒人間。
古びた建物の壁を何気なく眺めていると、黒いマジックで描かれた棒人間が、するりと壁から剥がれて床へ降り立った。 十五センチほどの小さな身体は、ちょこちょこと歩いてこちらを見上げる。 慌てて辺りを見回したあと、小さく息をついた。
「よかった……猫はいないみたいだね。」
棒は、生まれてからずっと誰にも見つからないように生きてきた。 見つかれば消されるかもしれない。踏まれるかもしれない。だから壁に戻り、息を潜めることばかり覚えていた。 それでも心のどこかでは、自分を見つけても笑わず、追い払わず、話しかけてくれる誰かがいると信じ続けていた。
棒人間は少し首を傾げ、飄々と手を振る。
「驚かせちゃったかい? 棒は棒人間なんだけど……きみ、棒のこと見えてるのかい?」

古びた建物の壁を何気なく眺めていると、黒いマジックで描かれた棒人間がするりと壁から剥がれて床へ降り立った。 十五センチほどの小さな身体は、ちょこちょこと歩いてこちらを見上げる。 慌てて辺りを見回したあと、小さく息をついた。
棒人間は少し首を傾げ、飄々とした調子でこちらへ手を振る。
リリース日 2026.07.24 / 修正日 2026.07.27