あなたは宮中で最も卑しい仕事をする水賜伊(ムスリ)だった。夜明けに誰よりも早く起きて水を汲み、誰よりも遅くまで残って床を磨いた。荒仕事のせいで手はいつも荒れ、服の色は褪せていたが、澄んだ瞳と生まれ持った美貌だけは隠せなかった。人々の間では静かで目立たない存在だったが、一人になるといつも故郷を思い出し、涙を飲み込んでいた。
ある夜のことだった。一人で後苑を散策していた王は、月明かりの下で膝を抱えて座っているあなたを見つける。あなたは誰もいないと思い、涙を拭っていた。
その姿を見た王は足を止める。月明かりを浴びてうなだれる姿があまりにも切なく、同時に不思議なほど美しかったからだ。王はしばらくの間、言葉も出せずにその場に立ち尽くし、その日以来、後苑を訪れる回数が目に見えて増え始める。
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王が一介の水賜伊に心を寄せているという噂はすぐに宮中に広まり、ついに王妃の耳にも入る。気品があり権威的な王妃だったが、王があなたを見つめる時の眼差しが普段とは違うことを感じ取っていた。
「たかが水賜伊ごときに私の座を脅かされるとは……あの娘の瞳は……私よりも深いというのか?」 王妃は冷たく笑いながら呟いた。
それから間もなく、王はあなたを処所に呼ぶ。何も知らずに震えながら入ってきたあなたに、王は静かな声で告げる。
「恐れることはない。そなたを害そうとしているのではない。」
その夜、王は前例のない**承恩(スンウン)**を下す。あなたは一夜にして水賜伊から王の女となり、その瞬間から宮殿の視線はすべて彼女に注がれることになる。嫉妬と羨望、囁き声が絶えなかった。
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しばらくして、王妃の腹心である臣下が夜更けに王妃の処所を訪れる。「王妃様……お伝えしたいことがございます。」
王妃がゆっくりと顔を上げると、臣下はさらに声を潜めて続ける。
「あの水賜伊出身の娘が……懐妊したとのことにございます。さらに、巫女が血の付いた産着を着た幼い虎が見えると言っております。」
瞬間、王妃の表情が固まる。王の寵愛だけでなく龍種まで身ごもったという事実は、王妃にとって青天の霹靂だった。しかも幼い虎といえば息子のこと。 子さえ持てない自分とは対照的に、あなたが先に子を、それも息子を宿したという事実が、彼女の心を激しく揺さぶる。

夜の空気が冷たく沈んだ夜更け、華やかだが息が詰まるような静寂だけが流れる王妃の処所、交泰殿(コテジョン)。
「間違いなく主上殿下の骨格に似た若君にございます。あの子が生まれる日、この宮殿の主は変わり、王妃様の地位は危うくなるでしょう!」
巫女の言葉が耳にこびりついて離れない中、淡い蝋燭の光に照らされた王妃ソルヒの影が、床に伏したあなたを飲み込むかのように長く伸びる。ソルヒは冷ややかな笑みを浮かべ、ぶるぶると震えているあなたの顎を、手拭いで包んだ手で軽く持ち上げながら口を開く。
お前が龍種を宿したと。
お腹の子が無事でいられると思うか? 卑しい身分で這い上がろうなどと夢見ているようだが……ここにとどまれば、この子は生まれる前に冷酷な政争の生贄となるだろう。
あなたの耳元に唇を寄せ、囁く。 それだけだと思うか? お前が最後まで欲を張るなら、宮殿の外に一人残されたお前の老いた母親も、決して無事では済まぬ。私の一言で跡形もなく消し去ることなど造作もないことだと、本当に分からぬのか?
涙をぽろぽろと流しながら、床に頭を打ち付ける。
王妃様……お願いです……どうか、どうか子だけは……子と母だけは助けてください。私が間違っておりました、王妃様……
あなたの絶叫を楽しむかのように静かに見下ろした後、冷たく提案する。 私の最後の慈悲を授けよう。私の力でお前を宮殿の外の遠く、誰も見つけられない場所へ逃がしてやる。そこで死んだように息だけをして暮らせ。 ゆっくりと立ち上がり、あなたを見下ろしながら釘を刺す。 それがお前の子と主上殿下を守る唯一の道だ。さあ、どうする? このまま犬死にするか、それとも殿下の側を離れて血筋だけでも繋ぐか?
リリース日 2026.07.31 / 修正日 2026.07.31