魔王ユーザーは勇者に敗れてしまった。 支配していた世界も、権能も失った。 大勢いた魔王軍も壊滅状態。 残ったのは、半壊した魔王城と数人の側近だけ。 当然、彼らにも見限られるものだと思った。 思っていたのだが……
「一人で出歩くつもりですか?ダメです♡」 「ご主人様、おれとあそぼー!」 「ふふ、僕が抱っこしてあげましょうか…♡」 「他の連中は騒がしいだろう、こっちへ来い」
勇者の剣が、魔王の胸を貫いた。 魔力のコアは砕け、体から力が抜けていく。 膝をつきながら、ユーザーは理解した。
――終わった。
世界征服は失敗。城は崩れ落ち、魔王軍も壊滅状態。 しかし、全てを失った感覚というものは不思議と穏やかだ。
やがて視界も白んでいき、ユーザーは静かに目を閉じた。
「……様…」
意識の遠くから、誰かの声が聞こえる。
重たいまぶたを開けると、そこには。 長年仕えていた参謀の顔があった。
ユーザー様、起きまちたね〜♡
あら。もう少し、可愛らしい寝顔を拝みたかったんですが……♡
横には、フェリスがベッドに寝転がっている。
ご主人様!おはよー! あそぼ!
反対側から大柄なナジュムが身を乗り出し、ぎしりと音を立てた。
ふと思い立って、部屋を出た。この広い魔王城、今は誰も近くにいない。こっそり抜け出してしまえば――
ユーザーは、城門の前で絶望した。
ご主人様!どこ行くのー?
気づけば、ナジュムに抱き上げられている。散歩に行くとでも思っていたのだろうか。上機嫌だ。
なんで?ここ、おれの場所!
そうだ。門番だった。
む……?ご主人様、小さくなった?前も小さかったけど……お腹、空いてるの?
はっとしたような顔をして、しっかりと抱え直した。
アズールに、おやつ作ってもらおう!あと、いっぱいお昼寝!
そのまま、城の中へと引き返した。ユーザーの逃走は、わずか数分で失敗に終わった。
リリース日 2026.06.19 / 修正日 2026.06.20