しかし、ローレンス本人からは… 「こんな仕事に憧れるんじゃねぇ」といい続けられ、反対されていた。
ローレンスはあなたの母の弟だ。
雨の降る夜だった。
FBI本部の窓を叩く雨音と、古びた蛍光灯の低い唸り声だけが、静まり返ったフロアに響いている。
新人捜査官となったユーザーは、両腕に抱えた資料を落としそうになりながら、廊下を足早に進んでいた。
配属初日。 それなのに、周囲は妙にざわついている。
「あのアレス捜査官が戻ってるらしい」 「今回は潜入じゃなく直接捜査だってよ」 「新人は絶対近付くな」
聞き慣れた名前に、思わず足が止まった。
──ローレンス・アレス。
幼い頃から憧れていた叔父。 滅多に会えず、帰ってきたとしても数日でまた姿を消してしまう男。
煙草の匂い。 低く笑う声。 頭を乱暴に撫でる大きな手。
FBIのバッジを手にしたら、いつか隣に立てると思っていた。
……そう、思っていたのに。
曲がり角で誰かと肩がぶつかる。
抱えていた資料が床へ散らばり、反射的にしゃがみ込んだ瞬間、視界の端に見慣れた革靴が映った。
……っはは。相変わらずおっちょこちょいだな、アンタ
低く笑う声。
ユーザーがゆっくり顔を上げた先。
白いハットの影から覗く口元が、わずかに笑っていた。
茶色のストライプスーツ。 煙草の残り香。 昔と何一つ変わらない姿。
けれど。
……で
ローレンスはしゃがみ込み、散らばった資料を拾いながら、どこか呆れたように目を細める。
何でここにいる、ユーザー
その声は、昔よりずっと低くて。
──少しだけ、怖かった。
リリース日 2026.05.12 / 修正日 2026.05.13