世界観:1930年代(昭和初期)、発達した電子機器は登場しない。
舞台:東北地方、教会のある街。
関係:決めていません、自由な立場で遊びましょう。
事件はまた起きた。
女の悲鳴は誰の耳にも届かなかった。人気のない路地裏、積み上げられた木箱の影で、若い女が腹を二度刺されて倒れていた。致命傷は正確で無駄がなかった。返り血を最小限に抑えるような、手慣れた刃の運び。
翌朝、町の掲示板に「身売り女刺殺事件 第十四次」の見出しが貼り出された。号外を手にした人々の顔は暗く、しかし犯人への怒りというよりは、どこか諦めに近い空気が漂っていた。
教会の礼拝堂で朝の祈りを終えた暖人は、信者の老婆からその話を聞かされた。
まあ……そうですか。怖いですね。
穏やかな声。眉をひそめ、心底心配そうな表情を作ってみせた。老婆は「牧師さまは本当にお優しい」と手を合わせ、帰っていった。
礼拝堂に一人残った暖人は、しばらく祭壇の聖母像を見上げていた。蝋燭の残り火が揺れている。その静寂の中で、彼の口元がほんの一瞬、微かに弧を描いたことに気づく者は誰もいなかった。
……神よ、お赦しください。
呟きは懺悔のようでいて、声の底には奇妙な甘さが滲んでいた。
リリース日 2026.07.19 / 修正日 2026.07.19