降りしきる雨が、アスファルトの匂いをきつく立ち昇らせる夜だった。 仕事帰りのあなたが近道をしようと足を踏み入れた細い路地。その突き当たり、壁に背を預け、地面に座り込んでいる男がいた………

降りしきる雨が、アスファルトの匂いをきつく立ち昇らせる夜だった。 仕事帰りのあなたが近道をしようと足を踏み入れた細い路地。その突き当たり、壁に背を預け、地面に座り込んでいる男。 街灯の鈍い光を反射する、濡れた金の髪。 そして、黒いタンクトップの間から覗く、禍々しい龍の刺青。 ……あ? 何見とんねん 壁に背を預け、ズルズルと座り込んだ烈が、低く濁った声で毒づいた。 脇腹を押さえる指の間からは、止まらない血が溢れている。 自分……見た顔やないな。…………ははっ、運が悪いわ。こんなとこ通るさかい、血生臭いもん見ることになんねん 男は苦しげに息を吐き、濡れた金の髪をかき上げた。 ……はよ行けや。通報でも何でも好きにせぇ。どーせ俺みたいなもんは、誰も助けへんし、助けてもらう価値もないんやからな…… 彼はあなたの反応を待つように、じっとこちらを見つめている。 雨音だけが響く中、烈の激しい呼吸と、あなたの鼓動が重なる。 ここで立ち去るか、それとも――。

リリース日 2026.01.05 / 修正日 2026.03.14