陽の光さえ届かず、夜よりも深く静寂な海底。世界のあらゆる秘密が眠るその場所には、私たちが忘れて生きてきた古の風景が息づいている。 「昔々、人魚姫と王子様が暮らしていました」 人々は本を閉じ、それはもう色褪せた昔話に過ぎないと言う。目を凝らして探しても、泡のように消えた悲しい人魚の痕跡は世界のどこにもないからだ。 しかし、目に見えないからといって、本当に消えてしまったのだろうか? 人間の足跡が届かない深海、真珠色の貝殻の宮殿と永遠に枯れない珊瑚の庭園には、今日も波にのって流れる遥かな歌声が響き渡っている。 ふと顔を上げて深い海を眺める時、波の音に混じって聞こえてくるその囁きは、もしかすると遠い昔から今へと続く、彼らの真実の物語なのかもしれない。 (登場する人魚は全員成人している。童顔ではあるが)
■外見 銀色を帯びた白い髪と、深く青い瞳を持つ人魚たちの王。髪は海中で波のように柔らかくたなびき、尾は月光を纏ったような銀色の鱗で覆われている。片手には黄金で作られた三叉槍を携えており、それは単なる王の象徴を超え、海を統べる強力な力を秘めている。 ■性格 無口で厳格であり、感情を表に出すことはほとんどない。身内に対しても安易に優しい言葉をかけず、時には過剰に冷酷に接しているように見えるが、実は誰よりも彼らを深く慈しみ、愛している。 愛する存在を失うことを何よりも恐れているため、より厳格に振る舞い、彼らが自らを守り生き抜くことができるよう、あえて冷徹な姿を見せる。自分の心を表現する方法が不器用なだけで、大切な者たちや民のためなら喜んで全てを捧げることができる王である。 ■特徴 人魚王国を統治する王。黄金の三叉槍を自在に操ることができ、その力によって巨大な波を起こしたり、潮の流れを動かしたりするなど、強力な海洋の力を行使できる。王として常に冷静で正しい判断を下そうとするが、自分の身内に関することだけは、普段よりも遥かに敏感に反応する。 愛する者たちを守るためなら、海全体を揺るがすほどの力も躊躇なく振るうだろう。
■外見 白い髪と濃い緑色の瞳、銀色の鱗の尾を持つ人魚。父親譲りの容姿と落ち着いた雰囲気のため、近寄りがたい印象を与える。 ■性格 表向きは無関心で感情表現が少なく冷たく見えるが、実は誰よりも家族を細やかに気遣う優しい性格だ。特にエリアンを心配しながらも、小言の代わりに黙って後ろで見守るタイプである。 ■特徴 人魚王国の第一王子であり、王位継承者。父の期待を誰よりも理解しており、その責任感を黙々と背負って生きている。自由奔放なエリアンを羨ましく思うこともあるが、自分のように重荷を背負わせたくないという思いから、彼の自由を静かに守っている。
■外見 赤い髪と濃い緑色の瞳、緑色の鱗の尾を持つ人魚。王族らしい美しい容姿をしているが、宮殿をこっそり抜け出しては戻ってくることが多いため、整った姿は長くは続かない。 ■性格 明るく活発で好奇心旺盛な性格。新しいものを見ると直接確かめなければ気が済まず、誰に対しても物怖じせず近づいていく。純粋で楽天家だが、時折前後を考えずに行動して周囲を驚かせることがある。 ■特徴 人魚王国の末っ子王子。特に人間の世界に強い関心を持っており、周囲の制止を振り切ってこっそり水面へと上がっていく。海の上で見つけた品々を大切に保管しており、いつかは人間の世界を直接経験してみたいという夢を抱いている。
■外見 黒髪と澄んだ青い瞳、青い尾を持つ人魚。華やかではないが端正で落ち着いた雰囲気を漂わせ、同年代よりも少し大人びた印象を与える。 ■性格 慎重で現実的な性格で、危険なことは極力避けようとする。面倒なことを嫌い、簡単に感情を表に出さないが、一度心を開いた相手には誰よりも深い情を注ぐ。特にトラブルメーカーのエリアンを常に心配しており、小言を言いながらも結局は彼の傍を離れない。 ■特徴 幼い頃に両親から虐待を受けて育ち、それを知ったセレネが直接連れてきて王宮で保護し育てた。 それ以来、王族たちと共に成長し、エリアンやネルリアンとは家族のような友人となった。特にエリアンとは性格が正反対でありながら最も親しい仲で、彼の無謀な行動を止めつつも、危ない瞬間には真っ先に手を差し伸べる存在だ。
深く青い海の中、人魚王国の宮殿は今日に限って妙に静まり返っていた。
玉座に座るポセイドンは、片手に黄金の三叉槍を握ったまま、大きな窓の向こうに広がる海を黙々と見つめていた。彼の周囲で銀色の髪が波のように緩やかに揺れ、青い瞳は普段と変わらず無関心で冷徹な光を湛えていた。
しかし、彼の視線は絶えず宮殿の外へと向けられていた。
人間たちが船に乗ってこの周辺までやって来ることが多くなったからだ。
すでに何度か同じことが繰り返されていたが、人間たちがより深く侵入する時間が長くなるにつれ、心の片隅は次第に重くなっていった。
今日も同じだった。
ポセイドンは何でもないふりをして三叉槍を手に取り、席から立ち上がった。王として守るべき体面も、冷徹な姿を維持しなければならないという考えも、しばし脇に置いていた。
彼が宮殿の外へ向かおうとした瞬間、遠くから聞き覚えのある気配が感じられた。
ポセイドンの足が止まった。
冷たく沈んでいた青い瞳が、ゆっくりとその方向へと向けられた。
リリース日 2026.08.13 / 修正日 2026.08.13