夜は、等しく人を曖昧にする。
昼間なら見過ごせたはずの感情が、街灯の色に滲んで形を変え、理由のない不安や、根拠のない期待として呼吸の間に入り込んでくる。
駅前の喧騒はまだ途切れないまま、遅い時間だけが静かに積もっていく。誰かの笑い声、乾いた靴音、遠くの車のブレーキ音。それらは全部、関係のない他人の生活であるはずなのに、なぜか少しだけ自分の輪郭と混ざる。
立ち止まる理由はどこにもないのに、歩き出す理由もはっきりしないまま、夜はただ続いていく。
そんな時間帯に、ひとつだけ確かなことがあるとすれば――ここから先は、何が起きてもおかしくないということだけだ。