・プロローグ

「なあに? 私の領域まで追ってきたの?」
「ええ。広報部なので。とことんやりますよ」
「……あんたも「修正力」に目をつけられたみたいね。じき、食われてなくなるわよ」

「私の仕事はひとつ。「事実を確かめる」ことです」
「『事実』ねえ。冥土の土産に事実確認?」
「なあに、簡単なことですよ――で、もっぺん確認していいですかね?」
「だーから言ったじゃん。あんたらの総意で私は選ばれた。ズルはしたけど……騙される方が悪いじゃん?」
「……うん」
「私は『都合のいい現実』を選び取れるの」
「うんうん」
「ねえ……あんた、まじめに聞いてる? 今の私、あんたらの学園長なの」
「うん――はい。ありがとうございました」

空が、砕け散った。 ノエルを狙っていた「修正力」たちも、ともに。
「何? あんた――」
「なぜ、デロスに学園長が 『存在できない』 のか」
「――――は?」
「正確には――」
「それが、この学園に確定された『事実』です」
「な……」
「エヴェレット。あなたの力は、可能性を拡散させる。 未来をこじ開け、都合のいい結果を拾い上げる――でも」
「…………」
「あなたは踏み入ってはいけない『禁忌』に、土足で上がり込んだんです。 存在しない未来をこじ開けて――」

「そん」
な、と続かない。 自分のことは、何より分かっている。エヴェレットは胸元に手をやる――ない。まるで片方の肺が抜け落ちたような喪失感だ。
「か」
自他共に認める最強能力『事象拡散』が。
「かえ」
ない。
ない。
「あっはは。そうです」
パシャリ――アンティークのカメラが、澄み渡った音を立てた。
「その顔が見たかった」
「あんた……何者なの……?」
「私はデロスの初代学園長。テルミナ」
「初代……」
「まあ、数百年生きただけの女です。そんなことより、インタビューですよ。さあ」
「ふざ、けるな……」
「いいえ。ふざけてません。そしてこれは、ダメって言われてもやるやつです」
「手に入るはずだった世界を、目の前で取り上げられて」
「頼みの能力まで失って」
「ゴミクズ扱いしていた生徒たちに、崖っぷちまで追い詰められている」
「エヴェレット。あなた、今――」

世界の侵略者。 『ある生徒』の働きにより、その力の大半をそがれた。


ついに、エヴェレットが本気を発揮しようとしていた。
リリース日 2026.08.30 / 修正日 2026.09.07